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 氷室って本当にわたしのこと好き?


 常々思ったことが胸のあたりでもやもやしていたから聞いてみたら氷室の動きが止まってしまった。ありゃりゃ、率直すぎたかも。一瞬しんとした空気の生み出した居心地悪さを渋いストレートティーと一緒に喉へ流す。氷室のうっとうしい前髪に隠れた目をじっと見つめてみたけど相変わらず、何を考えてるのかわからない。わたしに氷室の感情はわからない。わたしたちが恋人でも、言動や表情で思っていることがわかるわけじゃない。当り前のこと。ならば聞くしかあるまいよ。




「本当に好きだよ。…信じられない、かな?」
「じゃあ、敦くんとか劉とか福井先輩とか、男バスのみんなは?」
「みんなのこと好きだけど…。何が言いたいの?」
「わたしにもよくわからない」



 なんか、なんかね。上手く説明できないんだけど、氷室って聖母みたいに人を包みこむような接し方誰に対してもするのに、誰のことも全部突っぱねてるみたいだな、って思って。確証はないけどたぶん当たり?違う?心のどこかで他人とはわかり合えないって思ってる?こうやって自分のなかに他人がずかずか入ってこられるの、きらい?




「…どうだろうね」
「ねえ、何でわたしと付き合ってんの?」
「好きだから」
「うそ。氷室はわたしを好きじゃないよ。わたしも氷室のこと好きじゃないけど。」



 だから なんじゃないの?氷室を好きじゃないし嫌いでもない、ただのクラスメートとして見てるから なんじゃないの?わたし自分でも何言ってるかよくわかんないよ。
 てゆーか、本当に好きだったらその人の首絞めるかなぁ?




「うるさい!」
「ひ、っむろ」




 この人本当は強くなんかないね。きっとわたしが思ってるよりも、他の人が思ってるよりも、ずーっと弱い。自分の内面的なところに他人が踏み込まれるのが嫌いで、少しでも本質には触れられたくなくて。いつもは隠れてる目が怯えた感情剥き出しにわたしを見てる。氷室、わたしの首折れる。
 でもそれもいいかな。氷室がすごく愛しく見える今ならわたしを殺してもいいよ。殺してよ。
 ゆっくり頬を撫でると、首にこもっていた力があっけなく緩んでしまった。…そうやって、また、わたしを拒む。




「…っごめん、」
「ひむ、ろ」
「ごめん…!」
「だいっきらい」




130619 amo
…気持ち悪い


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