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 わたしの腹をかっ捌いたら何が出てくるでしょうか。たぶん大小様々な嘘と押し殺した意味のない叫びと飲み込んできた汚い白濁が出てくるんだと思いまぁーす。想像しただけでげろっちゃいそうなくらい汚いでしょ?
 でも表面はいたって普通だからさぁ。嘘は綺麗な夢に変わるし、シャットアウトされた叫びは澄んだ笑い声になりますとも。あはは。あはは。あーおかしい。鏡にアホなおんながいるよ。何かムカつく顔してバカみたいに口開けて笑ってらぁ。くだんねくだんね。あーあさっさとイかないかなまじめんどくさい。腹の中で客をさんざん罵っても問題なーい!だって口から出なけりゃ気づかれないんだもん。下手くそな前戯に喘いで喘いで、口の中ぱっさぱさ。だけどクソみたいなやつがいなけりゃわたしの生活は成りたたない。つまるところ わたしもクソ。いや、クソ以下ってわけ。知ってたけど。
 だから何?ってだけだけど。ほんと。で?、っていう。あーウケる。

 しにたい。




「大丈夫か?」
「なにが」
「…いや、」




 口ごもってんじゃねーよ、お前のそういうとこイラつく。口の代わりに足が出た。何でだろ。好きだと思えなくなったのとっくに気づいてるくせにまだ付き合ってる。ねぇ、何で?わたしの八つ当たり要員になっちった。元、大好きな彼氏。可哀相だから早くどっか行っちゃえ。手の届かないところまで逃げちゃえ。そんでわたしはどうなるのかわかんないけど。雅治は絶対に逃げない。顔が腫れても頭から血が出ても腕が折れてもわたしのところに帰ってくる。




「好きじゃ」
「…ははっ、」
「好き、…本当にお前のことが、」
「さっさと死ねよ。」




 彼の腹を捌いて開いたらわたしへの想いが溢れてるに違いない。そう思ってたときもありました。なーんちゃって!実際そんなことあり得なかったけどね。煙草を押しつぶしたばかりの灰皿を投げつけるとすごい音と匂いがした。たぶん灰皿割れた。そんなのもう日常茶飯事。すぐに雅治が新しい灰皿を持ってくる。ストックしてある。何でもかんでもストック。わたしが割った灰皿のストック。わたしがいなくなったときの女をストック。しね。





「俺はお前を愛しとうよ」
「…で、」
「汚いお前が愛しくてしょうがないんじゃ」
「うるさい死ね」
「死ぬときはお前の腹をかっ捌いて死んじゃる」
「…あっは、は、さいこー」




 まだ死ねないな。って思った。だってわたしの家包丁ないし。



130611 amo
汚物と叫びと白濁


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