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 たまに全てが嫌になる。特に理由はない。
 もやもやが積もって、自分でもどうにもならなくて、大事にしてた物とか大好きな人をめちゃくちゃにして、傷つけて傷ついて泣いて、そうしてやっと私の気分は晴れる。そこまでしないと私は泣けない。一種の自傷行為だよね、って紫原は引っかき傷だらけの顔でつぶやいた。うん。だから早くどこかに行きなよ。あいしてるから。あんたの肌を引っ掻いた感触が爪の間に詰まって、指ごと切っちゃいたい。




「はー?やだし」




 なんでなまえに指図されなくちゃいけないの、俺がここまでされて「わかったバイバイ死ね」って出て行くわけないじゃん。死ねとは思ってるけど。そう言った紫原の声はぞっとするくらい感情がなかった。ねぇ、正直もう限界でしょ。あんた死相出てる、あ、私も?ひどいね。二人して絶望の淵に立ってます、って顔してさあ。四つのつま先が割った鏡の破片の上にある。痛みを感じないのは、何が痛いのかわからないくらい心が麻痺してしまっているから。でもこんなんじゃ全然ダメで。紫原が離れていったらきっと死にたくなるくらいに傷つくかもしんないの。それを乗り越えなきゃ強くなれない。だから早く消えてよ。





「なんかさあ、」
「……なに」
「そこまで強くないといけないわけ?」





 そうだよ。じゃなきゃ私は生きれない。全てをばらばらに壊して踏みつけて、残骸の瓦礫の上で笑っていたい。こうやって壊すためにあんたを好きになってたのかもしれないの。もうわかんないけど。





「あんま勝手でしょ」
「うん、勝手なの。そんで我が儘でしょ」
「…でもさ、俺もなまえに負けないくらいわがままだし、こんなんされても好きだし、俺がいなくなってなまえがまた違う男を好きになるとか、」
「……」
「潰したくなるんだけど」




 それでもやっぱりいつかは離れてくよ。だって私わかったんだ。紫原よりも、強い自分が好きなんだよ。私を抱きしめた腕が震えているのを肌で感じながら、大事な恋人がただの男に成り下がっていく感覚に胸がすうっと冷えていった。






130110 amo
死体を踏んで笑う


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