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 夢の中で あ、これは夢なんだ。 とわかってしまうときがある。でも私の場合それに気づくのは夢から目覚める少し前のタイミングがほとんどだから、すぐ覚めるんだけど今日はそうじゃないみたい。夢で白いもやの中をただもくもくと歩いていた。進み続けることが当たり前なんだと知っているように。見知っている人、全然知らない人、みんな歩いてる。走ってる人もいる。道端で止まって靴ひもを結び直している人もいた。歩いても歩いても、疲れることはない。足元が汚れることもないけど、たまに靴が重く感じることがあった。ふと、一人でいることに寂しくなってどうしようもなくなって今まで歩き続けていた足を止めてみる。




「幸村?」




 頭に浮かんだ人の名前を口にした瞬間大事なことを思い出した。幸村はどこだろう。夢の中だってわかっているのに彼を探さずにはいられなかった。自分でもよくわからないけど、幸村を見つけないといけない気がして走る。白い視界が一層濃くなって、足下はぬかるんだ土の上を踏んでいるかのようだ。今まで全く感じなかった疲労が全身にまわっているし、彼がどこにいるかもわからないけど早く見つけなきゃいけない。そんな気がする。




「幸村ぁー!」
「…何だなまえか」
「やっと見つけた!」





 幸村は道の真ん中でうずくまっていた。この世の終わりだと言わんばかりの暗い顔をしてこっちを振り向く。





「一緒に歩こ」
「……無理だよ」
「何で?」





 自身の靴を指差す。白い綺麗な靴だ。だけど青の靴ひもがぐちゃぐちゃにこんがらがってしまっていて、それは幸村の脚まで続いていた。

 立てないし、歩けない。俺がほどけた靴ひもを結び直そうと思ってしゃがんだらいきなりこうなったんだ。ほどけないんだ。もう歩けないんだ。と言って幸村はぽろぽろ涙をこぼして泣き始めてしまった。





「ええ…そんなわけないよ。私ほどいてみる、いい?」
「できないと思うけど」
「できるよ」
「なまえは歩かないといけないんじゃないの?俺に構ってないで行けばいい」
「それはやだ。一人で歩くの寂しいし」




 幸村はまた静かに泣いて、私の手を握った。なぜだかわからないいけれど私も泣いていた。もし頑張っても靴ひもがほどけなかったら俺を置いていって、と幸村は言ったけどそんなことできるはずがない。おぶってでも歩くよ。




「って思ってる途中で目が覚めたんだけど、幸村何キロだっけ」
「お前今何時かわかってる?」
「3時です。ごめんなさい。」
「本当にね」
「だって覚えてる内に話したかったんだよー」




 彼女は鼻をすんと鳴らして幸村泣いてない?と聞いてきた。夢と現実がごっちゃになってるみたいで本当に心配そうに聞くもんだから何だか笑えた。




「泣いてないよ」





130422 amo
if you crying,


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