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「ゆきむらくんってかっこいいね」




 男に生まれたにも関わらず小さい頃からかわいいかわいいと言われ続けた俺に、その一言は今思い出してもすごく嬉しい言葉だった。舞い上がった俺(当時5さい)はすっかりその気になってしまって、その女の子を好きになってしまうわけだけど。単純だよなぁ、しかも10年も好きだなんて自分でもすごいと思う。





「幸村、お腹すかない?」
「コンビニ寄るの?」
「うん。ファミチキ買う。」
「…太るよ」
「うっせ」





 ゆきむらくん、と呼んでいたのがふてぶてしく幸村ァに変わり、口も悪くなった。何かもう見る影もないけどそれでも好きなのには変わらない。あのめでたい頭した紅白コンビには女を見る目がないとかどうとか言われるが、おまえ等にだけは言われたくないよ。家も近所で親同士に付き合いがあり、ほぼ毎日登下校を共にしていることで学校では付き合っている噂もあったんだけど、彼女がことごとく否定してからはなくなった。俺は下の名前でよぶのに彼女は昔から名字だし…、やっぱそういう目で見られてないのかな…。彼女は油ぎった肉のかたまりをちぎって、俺に食えと差し出す。





「半分こー」
「太るって言ったの気にした?」
「んーん、何となく」
「…ありがと」
「いいえー」





 あー何かこういうとこ好き。すごくどうでもいいとこなのかもしれないけど、食べ物とか誰かと分け合おうとするとこが好き。満開の桜の下を並んで歩く。






「昔からおやつとかくれたよね」
「そうだっけ?」
「うん。なまえは優しいよね」
「いきなり何!はっずかしっ!」
「ははっ」
「幸村はさあ、」
「うん」
「ちっさい頃助けてくれたことあったじゃん」
「あったっけ?あ、」





 少し茶色がかった頭の上に、毛虫が乗ってる。虫嫌いなのに寄ってこられる体質なのかな?教えるとパニックになるから、そっと肩を押さえて毛虫をつまんで投げた。不思議そうに見つめてくる彼女に、ゴミついてたよ。と嘘をつく。そっけなくありがとうと言ってそらした彼女の顔がちょっとだけ赤い気がした。






「何の話してたっけ?」
「…忘れた」




130327 amo
ボーイフレンド
(リクエストありがとうございました)



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