main* | ナノ


 乱されるのが嫌い。例えそれが恋人があったとしても。縛られたり、変に疑われたり、気持ちを左右されるのが死にたくなるくらいイヤ。そもそも感情で動くものが信じられないの。だから一人でいたい。死ぬときは一人、すごく理想的じゃない?孤独死がなんぼのもんじゃい。恋愛なんて必要ないの。恋してる自分も想像したくないし、駆け引きとか今さら何の面白みがあるっていうの?今まで付き合った人誰も本当は好きじゃなかった。ただの暇つぶしだっただけ。




「だからきっと誰も愛せない」
「いいんじゃない?別に」
「でもたまに人肌恋しくなって、みたいな」
「ふーん」




 だからお願いだから、なかったことにしてほしい。昨夜は頭の中が錯乱しちゃってて、なにがなんだかわかんなくなっちゃって、悲しくてイラついて、酒が入っていたとはいえ、敦とこんなことになるなんて。すごくタチの悪い夢だったらいいのに。下半身のだるさがリアルすぎて全くそうも思えないけどさ。ばらくの沈黙の後、口を開いたのは敦だった。





「コーヒー飲む?」
「えっ?あ、うん」





 インスタントコーヒーだけど、と言ってベッドを離れる。一瞬何を言ってるのかわからなかった。というのも敦はお菓子ばかり食べてるからコーヒーとか苦いものは苦手そう、なんて勝手なイメージを抱いていたからだ。床に散らばる衣服をかき集めて適当に着て、ふとベッドを見るとそれがキングサイズだったことに気づいた。てっきりダブルかと…、だって寝てるときはあんなに狭く感じたのに。




「なんかさあ」
「なに?」
「鬼のくび?とった、って感じー」
「は?」
「なまえちんさ、何考えてんのかわかんねーし、表情読めないじゃん」
「へぇ」





 私には敦が何を言いたいのかわかんない。小さなゴミ箱の周りには丸めたティッシュとかゴムの包装紙がちらばってて目眩がしそうだ。証拠としてはもう十分すぎる。名前を呼ばれ、顔を上げると敦がコーヒーの匂いを漂わせて私をじっと見ていた。その表情はまるで新しいおもちゃを見つけた子どもだ。ぞっとした。この男は何を考えてる。





「失敗した、って思ってるんでしょ〜」
「まあ、否定はできない」
「俺は念願叶ったり、って思ってる」




 にやり、





「俺ずーっとなまえちんが好きなんだ」
「ウソでしょ?」
「ホント〜」





 だからこれから俺だけに振り回されてね、って拒否権はないんでしょうか。




130320 amo
コンティニュー?



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -