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 バカみたいだ。何度も何度も、裏切られて殺してやろうかと思うくらいに憎むのに、まだ懲りずに好きだなんて。ばかみたい、じゃなくてただのバカだ。



「何で愛してくれないの」




 あー、まさか自分がこんな面倒くさい女になるなんて思わなかった。最初はそんなに好きじゃなかったのに、何回も裏切られるたびハマってる気がしてた。友達に何と言われてもあんたに光の何がわかるの、って思ってしまうくらいだから、きっと誰になんと言われようが止まらないんだろう。





「お前が俺を愛してくれんかったんやろ」





 なにそれ、掠れた声が去って、煙草の灰が落ちた。真っ赤になった頬を少しさすって光は目をそらす。手は電気が走ったかのように痺れてて、脳なんて感電したみたいだ。思考が止まる。
 なんで いまさら。
 光は私を好きだったの?私はずっと、光は中途半端に好きなんだと思ってたよ。きっと恋とか愛じゃなくて義務感でつながってるんだと思ってた。そういえば私はいつから光のことを見失ってしまったんだろう。もっと早くに言ってほしかったよ。独占欲に埋もれた愛でしかない。それに光は気づいていたんだね。気づかなかったのは馬鹿な私だけ。




「それでもええ、って思っとった」
「せやけど、もう限界…」
「俺は物ちゃう」





 さよなら、紫煙ごと消える背中を抱きしめる資格など私にはなかった。





130228 amo
赤マルの彼
 


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