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 最近の紫原はなんかヘンだ。人のスカート丈が短いとか言って下ろそうとするし、ちらちらこっちを見てきたかと思えば目が合うとすぐ逸らすし、昨日も飲みかけのオレンジジュース取ったら不機嫌になっちゃうし。ヘン。あと、やたらぼーっとしてる。ってこれはいつものことか。



「センパイどう思う?」
「ははっ」



 笑い事じゃないっすよ。あと、何か言いたげなんです。だから、何?ってそのたびに聞くのに「別に」とか言うし。全然「別に」じゃない顔してるの見ると腹立つんですよ。何かあるなら言えばいいのに。…もしかしたら紫原、私に隠し事とかしてるんかな。何かそういうのやだなー。携帯のランプが青く光ってメールの着信を知らせる。噂をすれば、紫原。



「どこいんの、だって。」
「敦?」
「ですよー。氷室センパイと、いる。」



 送信。送ってから気づいたけどこれじゃどこにいるかわかんないや。…ま、いっか。カーデのポケットをまさぐるとミルキーが2つ出てきたからその1つをセンパイにあげる。これ紫原に貰ったんだっけ。紙の包装紙にプリントされたペコちゃんを数えていると、センパイが不思議そうな顔で私を見ていた。



「なんすか」
「いや、何してるんだろって思って」
「ペコちゃん数えてるんですよ」
「何それ」
「センパイ知らないんっすか?この紙にペコちゃん10こいたら良いことあるんですよー」
「へぇー」



 私の紙を見せてペコちゃんを数える。いち、にー、…あー惜しい。1こ千切れてた。ぐしゃぐしゃに丸めてポケットにつっこむ。センパイがあげる、と拳を差し出してきたので手を広げるとミルキーの包装紙。


「ゴミじゃないっすかぁ」
「違うよ。10こあったからなまえにあげる」
「え」
「良いことあるといいね」



 えぇー…。何それかっこよすぎじゃないっすか、センパイ。惚れそう。ってかもう惚れてますけどね。紫原だったら絶対くれない、なんて全然関係ない紫原を思い出すあたり、私は相当モヤモヤしてるみたいだ。





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