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 女、というにはあまりにもオソマツだと思う。なまえのこと。席が近くてしゃべってたら何となく仲良くなって、今や女友達の間柄。たぶん俺となまえの雰囲気とか空気の感じとか、根本的に似てたんだと思う。一緒にいても全然うざくないから一緒にいる、みたいな。なまえは俺のベッドに寝転がってくつろいでいる。雑誌をめくる音と俺が食べる音、俺らの呼吸音だけが空気にとけてく、この感じが嫌いじゃなかったり。でもあんまり足パタパタさせると見苦しいものが見えるよー



「見んなし」
「見たくもなーい」
「へー」



 へーって。適当な反応もお互い様だから別に気にしないけど俺よりひどくない?てか何で当たり前のように俺の部屋にいるの。家帰れよ。



「あ、」
「?なに?」
「氷室センパイ来る」
「え、」
「敦ー、入るぞ?」



 ちょ、っと待って!のちょ、の時点で室ちんはドアを開け、なまえを見つけてぽかんとまぬけ面のまま固まった。そりゃーそうだよね。ここ一応男子寮だし。いくら俺となまえが仲良いっていってもこの状況はナシじゃん?



「なまえ、」
「はーい」
「もう遅いから帰りなさい」
「え、そこ?」
「一人じゃ危ないから送ってあげろよ」
「えーめんどくさー」



 って、なまえ明らかに俺じゃ不満って顔してるんだけど。俺に失礼なんだけどー。室ちん全く気づいてないし。にぶちん。なまえは室ちんが好きなんだ。…へー。



「紫原、ここでいいから。」
「…ん」
「また明日ね」
「ねぇなまえ、」
「なにー?」
「…何でもない。バイバイ」



 胸あたりがモヤモヤして気持ち悪い。あーあ、俺も気づいちゃった。…あーあ。





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