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世界を二つに分けるとしたら、光と闇だと思う。白と黒。彼は間違いなく黒で闇のほうだった。私はその世界にはいけない。彼がそこに行くことを許さないから。



「来週イタリアに発つよ」



私も連れて行って、
そう言えたらどんなに良かったか。しかしその一言を言えるだけの覚悟も力も勇気も私にはなかった。もし言ったなら、彼はこのまま私から去ってしまうだろう。私が後を追わないよう、私を黒に引き込まないよう、何より残酷な言葉を残して。



「……そ、っか」
「うん」



ミルクココアに口をつけて、目を伏せた。出会ったときはまだ私と同じ世界にいたかもしれない。違うかもしれない。私はあまり詳しいことを知らされていない。ただ知っているのは、彼は私と違う世界の人だってこと。白か黒か、それだけのことなのに彼をこんなに遠く感じる。同じになれない私は彼を愛していないと言った獄寺の姿をもう何日も見ていない。彼もまた同じくして黒だったなんて。



「綱吉、セックスしよう」



彼のココアが小さく波打つ。馬鹿でしょう。自分でもよくわかってる。でも彼のいた証を私の中に残してほしかった。あわよくば子供がほしかった。そしたら綱吉がいなくなっても寂しくないもの。綱吉を愛していたって、生涯言える。お願いだから私を一人にしないで。
しばらく無言で見つめあっていたら、ブレーカーの落ちる音がして辺りは真っ暗闇に包まれた。綱吉が今どんな顔で私を見ているのかわからない。私は泣いていた。



「…幸せになって」



ふわりと抱き寄せられて、優しい口づけを一つ。そっと頬をなでると濡れていた。私の手をとって、指先に口づける。明かりが戻ったとき既に彼は去っていた。きっと彼は二度と私の前に現れないだろう。それが私のためだと思っているのだろう。優しくて残酷な人。彼を愛していた。






白の世界であなたを待ってる。






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テーマ「人外ファンタジー」
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