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 別に特別好き、だなんて感情はなかった。なにしろ私は人を好きになったことがなかったので。ただ付き合ってみれば好きになれるのではないかと思ったから、いっかい首を縦に振っただけ。変だってわかってる。人でなしかもしれない。君は私を大切にしてくれるのに、私は君をまだ好きにはなれないのです。もしかしたら、この先ずっと。見切りをつけられたらすぐに別れてしまえばいいと思いながらもう半年が過ぎた。付き合い始めてから変わらず私を好きな君、君を好きになれない私。でも一応することはしてるわけでして。




「…は、アカン」
「ん」




 夢中でキスをする君の目がとろけてる。私も、こんな感じになってんのかな。思考が上手く回らないからたぶんそう。少しでも動くたびに互いの匂いが混ざる。あんまりこの行為は好きじゃない。全身で好きって言われてる気がして罪悪感に沈んでしまうから。鼓膜をゆらす「好き」がテンプレートすぎて軽く聞こえるから。薄いゴムは生産性を無くして、終わったら結んでポイ。毎回のこと。でも今日の君はなんか違う人みたい。気のせい?




「んっ、」
「…ごめん…っ」
「え、」




 息をのむ音に遅れて私たちの混ざり合う音が不器用に連続する。荒い吐息と、私の嬌声と、君の「ごめん」、隔てない性。いつもと違う、罪悪感だらけの君の顔。口だけの理性。背筋を何かが通り抜けた。ぞくぞくする。




「ぁ、っ…ごめんな、」




 いまなら君を好きになれる。って言ったら君は驚きと嬉しさで私の中に出してしまいそう。その後きっと最上級のごめんが聞ける。聞きたいけど言わない。今はただ君を好きなだけでいっぱいいっぱい。



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