「何だ、その面」
「朝帰り。だから」
仕方なくない?無表情の私に、朝って時間じゃねぇだろと獄寺は腕時計を覗いた。太陽は沈みかかり無機質な部屋に西日をさす。ゆらゆら揺れる煙が苦い。
「煙草くさいよ」
しゅっと香水を振りかけると獄寺は生来の顔つきをもっと険しくした。
「やめろ」
「ねえ、」
グロスが落ちかけた唇で囁く。煙草の灰がぽろりと落ちた。獄寺、抱いて。私を、抱いて。安心させて。めちゃくちゃにして。私をアンタでいっぱいにさせてよ。他の男なんか考えられないくらいに、私を、
「なあっ…、いい加減に、っ」
「…ん、」
「他の、男と遊ぶのやめろ…」
「好きって、言って」
言い澱んだ彼に今日も傷ついて、頭の中が獄寺でいっぱいになる。獄寺は?私は好きでもない男に抱かれている間ずっと獄寺のこと考えてる。私はね、獄寺が好きで悲しくて辛くて苦しくて、それでもやめられない。
「好きだ」
優しい嘘に涙が落ちた。優しい彼は気づかないふりをする。それでもいいと思った。