光のこと 好きだよ
足の爪を切るパチン、の音に紛れて確かに聞こえた。しかめっ面で化粧っ気ない顔に、ひっつめた髪、何ともない顔で俺を掻き乱す。ティッシュの上にのっていた爪が風圧でふわりと浮いて散乱した。あーあ、危ないなあ。いきなり突進してこないでよ。彼女は素っ気ないけど、いつものことだから別に気にしない。
「なあ、血出とる」
血じゃなくて、マニキュアだから。冷静かつ真面目な突っ込みどうもありがとう。背中から同じシャンプーの香りがして胸がざわついた。ついでに言えばその爪切る体制で膝小僧にあたってより目立つ胸とか、谷間とかに反応してるんやけど、彼女は無視や。完璧に無視。
「爪、切ったろか」
「いい」
「お前ちょっと深爪やない?」
「普通だし」
「貸してみ」
「やだ。光うざい」
うざいって、まあいつも言われとるけど。俺も言うけど。好きって言ったあとにこの態度何?デレツン?
「ねえ、」
振り向かれたら至近距離で、キス間近だったから、つい本能的に手が出た。いや口が出た。パチン!びっくりした顔がかわええ。
「血、出とる」
「マニ…あ、まじだ」