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「やめる……?」
「うん、やめる」



やけにすっきりした表情で先輩は眉を下げる。



「今まで何も言わなくてごめんね」
「別に、ミーには、関係ない…ことですー」



そっか、そうだね。なんて先輩らしくないですよ。いつもならむっと眉間にシワよせて言い返してくるのに。そんな顔しないでくださいよ(まるで今生の別れみたいで、嫌です)



「……足を洗うなんて今さらですよ」
「…うん。今さらだね」
「人殺しのくせに」
「………」
「普通に戻れるわけないじゃないですか」
「…………」
「…………」
「………フラン、」



ふわりと彼女の優しい匂いがして、温かい腕に包まれる。一定の心音が心地よく響いて荒れた気持ちがゆっくり静まっていく。



「…辞めるってことはそういうことだってわかってるんですかー」
「……これ以上、人を殺す苦しみよりはずっと楽かもって思ったの」
「…弱虫泣き虫意気地なしー」
「うん」
「お人好し」
「そうかな」
「そうですよ」



ゆっくりと彼女の体が離れる。少しでも先輩の意志を揺るがすことができるなら、と顔を上げて口を開く引き止められるような言葉を探す。……ああ、もうあなたは



「ありがとう、フラン」



泣きそうに笑う先輩を抱きしめて、「行くな」「俺が守るから」「愛してる」なんて格好良いセリフを吐けば行かないでくれましたか?人を殺し、その罪に苛まれながら生きる道を選んでくれましたか?それとも本当に先輩を愛していたなら、先輩と逃げるべきでしたか?



保身



ミーは先輩より自分を選び、今も生きて人を殺している。こんな最低なミーだけど一つだけ言わせてください。弱虫で泣き虫で意気地なしのお人好しで馬鹿な先輩が好きでした




101012 chikura




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