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俺は特別。自惚れではなく事実、俺はそのへんの人間とは異なった存在。育った環境が違う、考えが違う、常識も思うことも認識も何もかもが違う。違ったところで、そもそも理解しようという気はない。だってそうだろ?俺とお前は違う人間。犬や猫が考えることを普通の人間が理解しようと思う?思わねーだろ。そう考えろよ、お前がいくら泣こうが俺にはその理由をわかろうっていうのがないわけ。



「ベルは、」
「なに」
「人間でしょ」
「犬に見える?」



彼女の目に涙がたまる。他人の考えもわかんないけど、女の考えはもっとわかんねー。いきなり泣くし怒るし別れるし。かなりメンドクサイ



「じゃあ私は?」
「人間だろ」
「そのへんの人と変わらない?ベルにとって私は、今日殺した人と同じ?」



なまえの瞳が涙で揺れたように見えた。こいつの目は水晶玉みたいでえぐりたくなる。ナイフでえぐったらビー玉みたいにころんって綺麗に取り出せるのかな。やっぱやめよう腐ると嫌だし。



「ベルにとって人はみんな同じなんでしょう?理解できない他人でしかない」
「……………」
「自分より強いか弱いかなんて判断は動物でもできる。人としての心はベルにある?」



人としての心、なんてものがあったら趣味で人殺しなんかしないに決まってんじゃん。



「ベルにとって私は誰かと代わりのきく存在なんでしょう?」
「そうだよ」



そう肯定すれば、お前は泣くんだろうな。泣いて俺を罵るんだ。今までの女がそうだった。お決まりのパターン、飽き飽きしてる。そしたらメンドクサイし、ウザイから殺そうと思って肯定した。
なのに、何で、そんな顔するんだよ



「ベル、あなたは世界で一番悲しい王子様ね」



息ができなくなる。悲しい?俺が?笑い飛ばすことも叶わない。
彼女が俺を馬鹿にして言ったのではない。それは彼女の表情を、つたう涙を、俺を抱きしめる腕全てで理解できた。馬鹿にしたわけじゃない。なまえは彼女の考えをもって事実を言っただけだ。俺は何も反論できず、ただ押しつけられた胸の鼓動が伝わる。



「やめろ」
「やめない」
「やめろ…離せ」
「ベル、私はあなたを



ああ、俺はずっと避けてたんだ。怖かったんだ。心ってやつが怖くて避けてた。今もなまえの腕から抜け出すのは簡単で、なまえを殺してしまうのも一瞬で終わる。でもできない。なまえは心を俺に向き合わせようとしている。ただ純粋に。
言い換えるなら感情、だろうか。それは酷く重くて苦しくて、複雑にして難解。煩わしくて捨てるやつもいる。捨てたほうが楽だし、俺だって今の今まで持ってなかった。要らないもので忌んでさえもいた。だから俺には要らない、欲しくない、だからなまえ、言うな。



「ベルを愛してる」



煩わしくて、愛おしい。


101124 chikura
おかえり



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