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「星が綺麗だよ」



俺は目を開け、体をゆっくり起こす。言葉とは合わない表情で彼女は俺のベッドに腰かけていた。俺と目が合うと彼女は泣きそうな表情で笑った。俺はまだ涙を流さずに泣くということを知らなかったので、彼女のこの笑顔に不安を覚えた。



「見たい?」
「……そんなに綺麗なの?」
「幸村くんの想像や記憶の星よりはずっと綺麗よ」
「見たいな」



彼女はくすっと悪戯に笑い、両腕で自身の体を抱きしめる。すると、彼女の体が小さく光を放出し始めた。光がどんどん増していく。目に痛い光ではないが、暗闇に慣れた目には少しまぶしい。何色にも形容し難い光を見にまとって、彼女はその場でくるっと回る。綺麗な光を見せびらかすように。



「いいなあ」



口から勝手に言葉がこぼれた。うらやましいなんて、これっぽっちも思っていないのに。



「いいなあ、いいなあ」



壊れたオーディオのように俺はいいなあ、を繰り返す。彼女はうれしそうに光を放ってくるくると回る。



「幸村くんももうすぐ光るよ」
「もうすぐっていつ?」



子供のようにたずねる俺を彼女はもうすぐはすぐ、と母親のように笑った。



「でも幸村くんには光ってほしくないな」
「……。それって痛い?」
「痛くはないよ」
「すごく綺麗だ」
「……ありがとう」



彼女はまた泣きそうに笑った。



「幸村くん、窓を開けて」



俺は言われるままに窓を開けた。冷たい風がたちまち部屋を満たしていく。夜の空気は好きだ。静かで心が落ち着くから。無意識に一呼吸して、振り向くと彼女はいなかった。あの光もなくなって、薄暗い病室の景色だけが残る。部屋に帰ったのかもしれない。身震いをして窓を閉める。彼女も疲れていたのかもしれないな。明日彼女の病室に行ってみよう、少し温もりが残っているベッドに潜りこんで目を閉じる。綺麗な星だった。













101107 chikura


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