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「どこ行くの?」
「……コンビニ」
「こんな時間に?」



携帯を開くと、数字が日付変更間近を示していた。…もうこんな時間…、さっきまで寝ていたせいか時間感覚が狂っている。



「そっちこそ何でこんな時間にきてんだよ」
「バイト帰り」
「お疲れ」
「ありがと。ついでに忘れ物取りに来ただけ」
「帰んの?泊まってけば?何もないけど」
「綱吉の部屋に何かあったことなんてないでしょ」
「ひど」



事実だから否定はしない。ちなみに、冷蔵庫にはお土産でもらった明太子しかない。



「明太子ねー、うーん」
「米がない」
「スパゲティとかは?」
「あるかな…」
「あった」
「おー」
「誰か福岡行ったの?」
「向かいの」
「ああ、芸人みたいな顔した大学生?」
「そう」



鍋にスパゲティの麺がうずまく。ちらっとなまえを見ると眠そうな顔をしてテーブルに顔をふせている。



「眠かったら寝てていいよ」
「んー」
「なに忘れ物したの?靴下?」
「ちがあう…ビューラー」
「びゅーらー?」
「まつげの」
「あーハサミみたいなやつ?テーブルに置いておいたけど」
「ありがとー、また忘れないようにカバンに入れとかなきゃ」
「あとこれあげる」



ポケットから黒い箱をぽんと投げる。わたわたしながらも受け取ったなまえを確認して、また鍋を見る。



「なにこれ?………っ」
「あのさ、」



どすっ

背中に衝撃。お腹に細い腕が巻きつく。



「……泣かなくても」
「ひっぐ、泣っぐ…っわ」
「俺プロポーズとか噛んじゃいそうだから言いたくないんだけど」
「っふ、言って…」



鍋をかき混ぜていた菜箸を横において、泣きじゃくる体をそっと抱きしめて深呼吸。



「結婚して」
「…っうああああん」
「ふはっ」



泣き止んだかと思ったら、大声で泣き始めるなまえをもっと強く抱きしめる。緩む口を抑えようとしたら変な声が出た。なにこのくすぐったい感じ。視界にちらつく指輪がテーブルに転がってきらきらと輝いていた。



ありふれる



101021 chikura


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