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「あの子が女じゃなかったらよかった」



泣いていた。私は相槌をうちながら背をできるだけ優しく撫でる。熱に浮かされた言葉は、ぽろぽろと剥がれていくようだ。いつも冷静なこの子が必死に保ってきた虚勢が、剥がれていく。脆い。本当は危なっかしくて、細い線の紐で綱渡りしていた。一度亀裂の入った仮面は、もう元には戻らない。ああ、脆くてしようがない。



「私を好きにはならない」
「だってあの子は男が好きなんだ」
「私は好きだって、言うこともできない」
「本当に、本当に好きなの」



嗚咽が激しくて、聞き取ることも困難になってしまった。これをなぜ、私に言ったのか、私は考えている。気のおける友達だから?泣く子が大好きなあの子は外で待ちぼうけ。どんなに泣いたって、届きやしない。届いてはいけないのだと、この子があの子を追い出した。



「私はあの子が一番好きだけど」
「あの子と私の好きは違う」
「あの子は私を好きだけど、違うんだよ」
「どうして、何で、何で」



泣きつかれて眠ってしまえば、このことを忘れてしまっているだろう。明日には聞かなかったことにして、言わなかったことにして、また、この子とあの子は仲良しごっこ。







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