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「ごめん、別れよう」



突然の別れに私はガリガリくんを落とした。え?別れる?不思議にも頭の中は落ちついていて、昨日コンビニで立ち読みした雑誌の"別れ話を切り出されて上手くかわす方法"を思い出していた。「嫌だ、別れたくない!」と泣きじゃくって困らせればいいのか、それとも「それよりガリガリくん美味しいよね〜」と話をそらすか……。悩んでいる間に彼は沈黙を肯定と見なしたのだろう、気づいたときには私と落としたガリガリくんに群がったアリしかいなかった。



「まあでも、私、彼氏のことあまり好きじゃなかったし、これでよかったじゃん。だって自分からふるのも出来ないだろうし、さあ、うん…」
「何ブツブツ言ってはるんすか」



ぱっと顔を向けると、知らない男子はぎょっとした。それもそのはずだ。私が涙でぐしゃぐしゃのヒドい顔を見せたのだから。この顔を見たのが全然知らない人で良かった。「すんません」と彼が言った気がしたが声が小さくてはっきり聞き取れなかったし、彼が謝る理由もないので私は聞こえなかった、ということにしておく。さあ、早く去れ。私を一人にしてくれ。



「どないしたんすか」



えええ、流れからしたら立ち去るでしょ。さっきぎょっとしたじゃん。うわめんどくさ、って顔したじゃん。何で隣に座るんだよ。中途半端な優しさなんかいらないよー



「……」
「ふられたんすか」
「…っく、」
「すんません見てました」



その"すんません"か。ぐすぐすと鼻をタオルで抑え、小さく呼吸をした。左にある青い上履きの踵が潰れてくたくたによれている。



「何か言いはったら良かったんに」
「いい。…あんな…ブタ男…わ、別れてよかったから!」
「…ブタを悪く言うもんやないすよ」
「…だって、臭いもん」



それが違うんすよね、と彼は学ランのポケットを探る。



「俺ブタ飼っとるんすけど、案外綺麗好きっすよ。知ってはります?」
「……ウソ」
「ホンマっすよ」



言うなり私に背を向けて、携帯を差し出す。それについたストラップの、ピンクのブタをつまんで「ブウブウ」と真似をしてみせた。



「なまえ、こんにちは」
「こんにちは…ブタちゃん」
「気分は?」
「…悲しい」



はは、と笑うと彼も少し笑った。携帯をしまってレモンティーに口付ける。ガリガリくんに群がっていたアリは増えていた。



「ね、…名前は?」
「財前光」
「かわいい名前」
「ぶっ」




後輩とブタさん




110410 chikura
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知る人ぞ知るレオンパロ





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