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六畳一間のワンルーム、外で咲き誇る桜を見て彼女は「桜が落ちる速度って秒速5センチメートルなんだって」と呟いた。それは前に俺が教えたことだが「へえ」と返すと「早いのか遅いのかわかんないよね」と言う。その感想も前彼女が言ったことなのだが。ぶわっと強い風がふいてカーテンと彼女の髪が舞う。
「服着らんと外から丸見えやで」
「んー」
ぼんやりと生返事。全く…こんな無防備でよう今まで生きてこられたな。俺が脱いでそのままのTシャツを渡すと「んっ」とバンザイのポーズ。何や着せろっちゅーことか。彼女に甘えられるのは嫌いやない。彼女の腕に袖を通しながら、デジャヴを感じる。そういや甥っこにもこないなことしたったなあ…、んでこうやっていじめた。
「前が見えない」
もがもがと暴れる彼女が面白いので、袖を縛ってそのままにしてみる。…あ、倒れた。
「…ふはっ」
「頭うった」
頭を通してやると、ぶすっと不機嫌な顔を表した彼女に啄むようなキスを何回もしてやる。ふいに肩を押されて彼女の濡れた唇が押しつけられる。
「好き」
落とされたTシャツと桜の花びらが床にすべると同じに、彼女を押し倒した。
午後3時に溺れる
110404 chikura
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珍しく甘い