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会いに行こう。そう思ったらぱちっと何が自分の中で当てはまった感覚がして、それからの行動は早かった。真っ赤なキャリーバッグに春色ワンピース、花柄チュニック、ボーイズデニム、彼とお揃いのスウェット、化粧ポーチ、とにかく入るだけつめこむ。あ、メール打っとこう。バイトでコツコツ貯めてきたお金を電車の切符に変え、電車を乗りつぎ、どんどん変わっていく景色を眺めながらiPodでかかっている曲を口ずさむ。こいしくてにくらしーいおおーさかあー。驚くかなぁ、会うのは正月ぶりだもん。きっと驚くんだろうなー財前の驚いた顔写メろ!あー楽しみだなー



「観光ですか?」



隣に座っていた人の存在など微塵も気にかけていなかった私は食べていた駅弁を喉につまらせ、せき込む。



「あ、いや、観光っていうか、…財前!!!」
「人を指さしたらアカン。座れ」



何でここに財前が!眉間に皺をよせて私を見つめる財前に今までのウキウキ気分、一転。しーんと静まり返りお通夜のような雰囲気に包まれる。



「お、怒ってらっしゃる…」
「怒っとらん」
「……」
「……ごめん」
「怒っとらんて言うとるやろ」
「だって、じゃあ、何でそんな顔するの!」



ガタッと立ち上がると前のおじさんが迷惑そうに視線を向けた。何なんだもう、私は財前に会いたくて来たのに!



「呆れとったんや」
「……」
「お前ホンマ俺のこと好きなんやなあって」
「……そうだよ」
「知っとる」



ラブユーラブユー


「あ、布団一組しかないけどええ?」
「全然いいよ」
「じゃあお前床な」
「何で!一緒に寝ようよ!!!」
「声デカいわ!」


110403 chikura





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