main | ナノ
「ぶわっはははっは!!あーはっはっは!!!はっはっぐふえ、げほっ、やべ、ツボ入った!」
消毒液をしめらせたガーゼをあろうことか素手で持ち、笑い転げるこの男を殺してやりたいと思った。
「笑いすぎっすよ、丸井先輩」
「だってよお!傑作だろぃ!あー腹痛ぇ」
「なまえ先輩がかっ、可哀想じゃな、い、ですか」
とか言う赤也も震えてるしね。笑いこらえてるのバレバレだかんね。もう限界っす!と二人して笑い転げる始末で私は怒りを通りこして呆れてきた。もうかれこれ20分丸井はゲラゲラと笑いっぱなしだ、そろそろ丸井の喉がイカレれればいいのにー。
「はー…お前って本当に馬鹿だったんだな」
「しみじみ言わないで」
事のあらましを簡潔に説明しよう。チャリ通の私はいつも通り登校していた。途中考え事にふけってぼーっとしていたら電信柱にぶつかったというわけだ。顔からぶつかったので、頬に電信柱の黄色のブツブツのあとが出来ている。まるで漫画みたいなマヌケさ。死にたい。
「ほら、消毒してやっから!ふてくされてねえでこっち向け」
ふてくされてるのは誰のせいだっての。チャリはめちゃくちゃだし、全身痛いし、こいつらには笑われるし、一人くらい誰か心配しろよ!
むすっとした顔のまま丸井の方を向くと、「あやっぱこっち向くな!あはははは!!」
………死ねばいいのに
「もういいよ自分でする!」
それにしても今日は仁王がいなくてよかった。あいつまでいたらこのウザイ笑い声がステレオになって響いていたわけだ。あー本当によかった。
「なまえ先輩って意外とドジっすね」
「こいつ結構ドジだぜ!この前も〜」
「その話したら丸井が電車で痴漢に間違えられた話するから」
「おいーそれほとんど話してる!」
「でもあれだよ。私より仁王の方がドジだから」
そう。仁王は本当にドジ、というかバカだ。横開きの戸を一生懸命おして壊すし、夏休み初日に学校来たり、逆に新学期まで休みだと思ってたし。この前も何もないところでこけて「今モグラがおったんじゃ!」って言い張るし。残念すぎる。
「でも仁王今日来るっつってた」
「いつも口だけじゃん」
「エロビ返してもらう約束」
「最低」
「あれ仁王じゃね?」
階段から見下ろすと白い頭が見えた。おーい仁王!丸井が呼ぶと仁王は周りをキョロキョロと見渡して私たちを見上げる。
「お前さんどうしたんじゃその顔、ぶふっ!、うわっ」
階段を踏み外して転がり落ちるとはさすが仁王。丸井の腹筋は明日にはバキバキだろうね。
110127 chikura