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好きって言われて嬉しくないわけがない。求められて応えないわけがない。付き合ってと言われたら付き合うに決まってる。来るもの拒まず、去るもの追わずが先輩の恋愛論である。
「その結果が四股っすか、ドン引きっすわー」
「フるよりはいいじゃん?」
「…本気で言っとります?」
もちろん、の意を込めてにっこりと微笑めば財前は顔をしかめてありえへんと呟いた。この反応には飽きているのでスルー。スカートを直しながらところどころ塗装の剥げてしまった携帯を開くと新着メールが3件。メールを確認する私を財前が呆れ顔で見る。
「この男達も不憫っすわ」
「えーそんなことないって、楽しそうだよ」
「いつか刺されますよ、夜道に気ぃつけて」
不穏な言葉を残して屋上を立ち去ろうと背を向けた彼の服を引っ張って見つめると、ため息をつきながらしゃがんでキスをくれた。財前も何だかんだ言って私のこと好きでしょ?ハイここ笑うとこね。財前が私なんか好きなわけない。
「調子に乗らんとってください」
「はいはい」
今度は深いキスをされた。もちろん財前は私の彼氏ではないのです。
*゚*。*
ふられました。それも四人一気に。言葉も出ません。
いつもはハートの絵文字使いまくりのメールを送ってくる先輩から文字だけのこんなメールがきた。相当落ち込んどるみたいや、チャンスかもしれへん。何とか居場所を聞き出すと学校と答えたので、いつもの屋上に向かうと先輩がぐたあとコンクリの床にうつぶせていた。ピンクのパンツが見えているが今の先輩にはパンツなんかお構いなしみたいや。
「四股バレたんすか?」
「んー違う、と思う、……多分」
みんな私に飽きたんだ。そりゃそうだ。だって私記念日とか全然祝わないし、誕生日も覚えないからプレゼントあげたことないし、自己中だしすっぴんマジブスだし性格悪いし飯おごらせるし。ポツポツと話す内容を聞いてると確かにそれは飽きられてもしゃーないっすわ。
「私なんかヤるだけの女なんだ…」
「先輩って男いなくなったら暗なるんスね」
「どうせ根暗ブスです」
「めんどいっすわ」
ショックを受けた先輩を見るのは初めてやった。いつもより手抜きなメイクは何となく無防備でドキッとした。今なら、いけるんやないか?
「先輩」
「私のことはカスと呼んでください」
「付き合うてください」
「……え」
「俺と付き合うて」
「財前、」
「何スか」
「私のこと好き?」
「好きっす」
「本当に?」
「大マジっすわ」
至近距離で見つめる先輩の顔が近くて今までにキスとか何回もされとるのに、そのとき以上にドキドキする。目がきらきらして綺麗や。
「ありがとう財前」
「!ほな、」
「やる気出てきたあ!新しい男に行くぞーおーっ」
あ、れ?
「あの先輩、」
「励ましてくれてありがとね!財前大好き!」
よおし、メイクがんばるぞー!と意気揚々として屋上を出ていった先輩に俺は一人でこけた。なんでやねん
110125 chikura