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頭がおかしい女。こんな女は俺の人生できっとこいつ一人だけだろう。というか、かなり面倒なのでこいつだけでいい。こんな女何人も知り合えるか。



「おい」
「あー跡部じゃん」
「一応聞くが、何してる」
「盗撮」



俺の目の前でか。
超至近距離で携帯カメラを向けられて、反応に困る。盗撮じゃねーよバレバレだ。隠す気もないだろ。はあ、とため息をつけばカメラ曇ったと嫌な顔をされた。何でだ。



「記念記念」
「近えよ」
「鼻のあなー」



いくらサービス精神に溢れ、カメラを向けられればポーズをとる俺様だって鼻の穴を撮られれば不快になる。



「やめろ」
「えー」
「撮るなら遠くから撮れ」
「大丈夫、跡部は鼻の穴もかっこいいから」



馬鹿にされてる感が否めない。黙っていれば可愛い部類に入るこいつはその奇行のせいで誰ともつるまない。くせに俺に会えば馴れ馴れしく声をかけ、気分次第で俺を振り回す。厄介なのに気に入られたものだ。本当に…黙っていればそこそこなのに。
その日、女は跡部のパーツ撮影会と称し、被写体が俺様とわからないような写メばかりを勝手に撮って満足げに帰った。何なんだあいつは。いちいち相手にする俺様もどうかしている。
















「何してる」
「跡部ってそればっか」



テニスコートから保健室のベッドに寝転ぶ女が手を振っているのが見えた。女はよく見知ったあいつ。俺が保健室に来たとき、さっきまで一緒にいた男はもういなくなっていて、ベッドに腰かける女のシャツは全開。ボタンを止める様子もなく、ぼーっと俺を焦点の合っていない真ん丸な目で見つめる。



「いっしょに死ぬ?」



普段と変わらぬトーンで言うものだから、ああ、と返事をしそうになった。



「……死にたいのか」
「ううん」
「お前は何なんだ」
「跡部の気を引きたいだけかも」



かも、って何だよ。



「さっき脱処女したから抱いてくれる?」
「は」
「跡部とセックスがしてみたい」
「そこじゃなくて」
「……?」



とりあえずボタン止めろよ。目に毒だ。こいつに見つめられると言葉が上手く出てこない。



「さっきのは彼氏か」
「違う違う」
「じゃあ誰だよ」
「知らない」
「ヤったのか」
「うん」
「……」
「跡部は処女なんか相手にしてくれないと思ったから」



うるうると目に涙をためて、計算じゃねーのか。俺が処女を相手にしないっていつ言ったんだよ。ずれてる。



「嘘だろ」
「うん、嘘だよ。ぜーんぶ嘘。だからもうどっか行って。恥ずかしいから」
「まだ処女なんだろ」
「…捨ててからもっかい頼む」



恥ずかしすぎて死ねるわとかぶつぶつ言ってる女は頭がおかしくて、色々とずれてる。こんな女が気になる俺もおかしくなっちまったのかもな。



「その前に言うことあんだろ」
「ないよ」
「俺が好きじゃねーのか」
「うん」
「どっちだ」
「好き。跡部が好き」



順番ちげーだろと頭を小突くと、本気で痛い!とわめく。嘘つきめ。



「跡部、」
「ん」
「誕生日おめでとー」
「ああ」
「…えいっ」



頬にやわらかいものがふにっと当たる。俺様にやり逃げとは。顔に集まる熱を冷ましながら、明日あの女に会ったらどうしてやろうか考えてる。いやでも、あいつの事だ。なかったことにされるかもしれない。…今のうちにやり返しとくか。文字通り、女のケツを追っかける俺様を笑いたきゃ笑え。





111004 chikura
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Happy birthday 跡部






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