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※丸井がHOMOを前提としてお読みください。



「愛されたい」



教本通りに生けられたリンドウをへし折るその手や言葉とは裏腹に丸井が普通の、いわゆる真顔だったもので、私は読んでいた雑誌を閉じる。



「愛してあげようか」
「嫌だ」
「あ、そう」



即答かよ。しかも、ため息までつかれるとこっちだって少なからず嫌な気持ちになってんだけど。再び雑誌を開く。丸井は完璧に無視することに決めた。



「ちんこ付いてないから嫌だ」



ハイ、かなり無茶なこと言ってる丸井を無視。このホモ野郎め。お前なんぞフラれてしまえ。あ、もうフラれたんだっけ。そこそこイケメンのTSUTAYAの店員に目をつけた丸井はそれから毎日TSUTAYAに通いつめ、たった数十何日で彼をおとし、たった1ヶ月でフラれた。短すぎる恋はあの俺様ブン太をこれほどまでにセンチメンタル(笑)にした。ほんと、かっこわらい。
丸井が惚れっぽいのも知ってたけど、まさか男が好きだと知らなかった私は、まさかのまさかで丸井が好きだった。訂正、今でもちょっと好きです。何て不憫な恋でしょう。ちなみに全部知っていた仁王はそんな私を見て、かっこわらい。くたばれ。懲りずに丸井と一緒にいるせいで、私にもホモの人とかわかってきちゃったしね。いらんスキル身につけた。



「お前ちょっと工事してこいよ」
「死ねば」
「性欲処理にしてやっから」
「てか丸井って、」
「何」
「その……受け?」
「うん」



これには雑誌を落とさずにはいられなかった。まあ、可愛い顔してるから、まあ、その…うん。今ちょっと頭ん中で想像しちゃったじゃん。アリとか思っちゃったよ。あーやばい染まってきてる。丸井のマイノリティセクシャルに。



「丸井がちんこ取れば」
「は、ないわ」



おま、私には同等のこと言ったくせに…!丸井がちんこ取って、私にくれればいいよ。そしたらちょうどいいと思うんだよね。私が攻めとかちょっと無理あるかもしんないけどさ、頑張るからさ。












「おま、それは変じゃ」
「あ、やっぱそう思う?私も今言っててないわと思った」
「染まってきとらんか?」
「……やっぱ?」



神妙な顔つきで頷く仁王と頭を抱える私。水を打ったように静まる空気。当の本人、丸井は飲み物を買いに行ってて、この場にはいない。だが、と口を開いたのは私。組んだ手を前にして、いわゆる碇ポーズで冬月、もとい仁王に話しかける。



「それはつまり、ちんこがあれば付き合える、とも考えられないか?」
「待て。それは…」
「たかが軽口、されど軽口。丸井も意味のないことは言わない」
「しかし碇!」
「必要なのは…ちんこだ。」
「何やってんだ」



エヴァごっこをノリノリで(しかし内容は最悪)していたのに、良いところで丸井に邪魔されてしまった。萎え。仁王は「使徒出現!パターン青!」と気持ち悪い女声でまだエヴァごっこを続けていたので、白けた目で見つめてあげといた。



「なあ、何の話?」
「何でもない」
「あそ」



ジャムパンを頬張る丸井に「早く彼氏出来るといいね」と言うと、「お前に言われたくねーよ」と可愛くない返事。まあ、何だかんだ私はこのバカやってる関係に満足しているのである。工事は検討中である。




110913 chikura






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