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死んでくれないかな
Tシャツの白さに負けないくらいの肌の白がまぶしくて目を細めた。終日太陽の光に照りつけられているにも関わらず、彼の肌は白い。その白はこれから汚されるのだけれども、彼はそんなことこれっぽっちも気にはしないのだろう。そして私は、暑い。



「ねー、精一ぃ」
「んー?」
「暑いんだけどー」



だるく語尾を伸ばして、精一の背に叫ぶが返ってくるのは適当な声。土いじりに夢中で暑さも私もお構いなしってわけ。そこらへんに生えてる雑草をぶちり、千切ってのそのそ動く彼に投げつける。飛距離伸びず、目標物まで届かず、沈没。名前も知らない花たちが咲き誇る庭は彼があの手で作り上げたもの。たくさんの愛情を受けて、綺麗だねって言われる花が少し羨ましい。精一さーん帽子被んないと熱中症になるよー。口で言ってもどうせ届かないのでテレパシーを送ってみる。うん、半分冗談ね。はーどっこいしょ、ジジババみたいな声を上げて、立ち上がる。精一が熱中症になる前に帽子をかぶせてあげねば。あと麦茶も用意しとくかな。



「うわっ」



振り向くと、精一が倒れてた。ひっ、だか息をのむ自分の声を遠くに、慌てて裸足で精一の元に駆ける。足が土で汚れるのも構わずに。…精一!「うあーびっくりしたー」……え?



「ぎゃっ「わっ」



ずるっと盛大に滑った私は精一の驚いた顔をまるでスローモーションに感じながら、土の地面へダイブ。のはずが、まさかの精一が滑りこみスライディングをかましてきたので、顔面ダイブは何とか免れた。下敷きになった精一のおかげで。



「だ、大丈夫?」
「…何とか」
「ごめん…ありがとう精い、あははっ」
「ふふっ、…ははっあははっ!」



精一の顔は土で真っ黒。たぶん私も同じくらいに真っ黒。間抜けな姿に笑いが起こる。ひとしきり笑って、そのまま地面に倒れた。あ、地面のが冷たくて気持ちいい。でも太陽、眩しい。



「……倒れたかと思った」
「うん、滑っただけ」
「人騒がせなやつ」
「勝手に巻き込まれたのはそっちだろ」
「サーセン」
「ちょっと太ったんじゃない?」
「え、ウソ」
「ウソ」



ふふ、と笑う精一の横顔ほど綺麗なものを見たことがないって言ったら少し嘘くさいかな。



「喉かわいたな」
「ちょっと待ってて」



麦茶持ってくるから、と腰を上げる。上から見るとまるで精一が花葬されてるみたいで、羨んだ花たちよりも美しい様に少し見惚れてしまう。死んでくれないかな。私と一緒に、この庭で。爽やかな昼下がりにこんな物騒なことを考えてしまったりして。


エデンの庭



110912 chikura








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