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我慢ならんわ。
気力もなくつぶやく。同時に机へ突っ伏すと冷たくもない常温のそれに更にイラついた。暑い。まだ7月の始めだというのにこの暑さは何や。異常や、異常。異常気象や温暖化や。伏せたまま薄汚れた窓の景色に目をやると、ぶ厚い本で叩かれた。
「…痛いっすわ」
「何手止めてんねん」
さっさ部日誌書きぃや、一瞥してまた携帯に目を落とす先輩にバーカと悪態をつく。もちろん心の中で。口に出せば今度は本の角で叩かれることは間違いない。汗でベタベタとはりつく紙の感触にうんざりする。そもそも何で俺が部日誌書かなアカンねん。先輩の担当日やろ…。前のイスに座って携帯をいじっている先輩をジト目で睨むも先輩は携帯に夢中で気づかない。あ、嬉しそうな顔した。…謙也さんからメールきたんやな、レス速すぎやろ。俺全然先輩と話せんやん。くそったれ。文字が醜く歪んだ。今日の欠席は、なし、遅刻も、なし。感想は…、
「後輩を理不尽にパシる先輩マネジがおります、と」
「おいこらーバレるやん」
「あー喉かわいた」
「…何飲むん」
「おごってくれはるんすか?おおきに」
「うわっわざとらしー」
先輩マネジに口止め料としておごってもろた と書き足す。
「字きたな」
「先輩っぽく書いてあげたんすわ」
「こない汚ないわ」
知っとるわ。あんたのことどんだけ見てきた思ってん。ああもう嫌やなこの空気。暑くて頭回らんわ。先輩が暑いと一人呟いてパタパタと下敷きで扇ぐ。送られた風が俺の首もとにゆるく触れて、するりと離れる。その生ぬるさに目眩がした。
「先輩、」
「ん」
「…何でもあらへん」
謙也さん帰ってきたら炭酸ぶっかけたろ
110725 chikura
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片思いで不憫な財前がこの夏アツい