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「二人に謝れ」



謙也さんが俺を殴った。
その事実が受け入れられなくて頭が真っ白になる。次第に痛み出す左頬に手をあてると、少し熱かった。



「先輩らキモイっすわ」



これはさっき俺が言った言葉。小春さんとユウジ先輩に。いっつも言っとる俺の一言に、なぜが小春さんが泣いて、謙也さんは怒っとる。…いつもみたいにノリで言うただけやん。俺を怒るんわ部長で、謙也さんはなんやかんや言うて庇ってくれるんに。



「おい謙也、いくらなんでも殴ることないやろ」
「そやって白石が甘やかすからあかんねん!」



ドンッ!壁に叩きつけられた拳で、空気とみんなの肩が揺れる。睨み合う部長と謙也さんなんて今まで見たことない。



「甘やかしとらんやろ!」
「口だけで注意しても財前はわからんのや!」



突然名前を呼ばれ、肩がびくつく。俺を見る謙也さんの視線が怖かった。謙也さんはもしかしたら俺のこないな一言に今までずっと苛ついとったんかもしらん、せやったら、俺は謝らんなあかんのに、…険悪な空気に息をのむ。



「せやからって殴ってもええんか?!」
「財前のも言葉の暴力や!」
「どっちもあかんけど、手ぇ出したらもっとあかん!謙也、財前に言うことあるやろ」



どないしよう。謝らな、謙也さんに謝らな、あと二人にも、みんなにも謝らな、謝らなあかん。喉が焼けるように熱くて、俺は泣きそうになるのを堪えるのに必死やった。謙也さん、ごめんなさいって、言わな。…嫌われる。



「財前、」
「……」



沈黙が痛い。謙也さんは今までに見たことがないような顔で俺を見る。その後ろでみんながハラハラしているのが手に取るようにわかる。やって俺もこんな謙也さんは怖い。



「誕生日おめでとう」



……は?
直後、パーンパーン!とクラッカーの音がして おめでとう の声。はっ、えっ?



「驚かしてごめんな」
「誕生日おめでとー!」



謙也さんがぎゅうっと俺に抱きついてきて、いつものように優しく笑うから、俺は安心して少し泣いてしまった。



110720 chikura
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謙也さんに絶対的な信頼を置いているからこそ冷たくされると不安になる財前が可愛いと思いました。いじめてごめんね。誕生日おめでとう、というわけでこちらフリーとさせていただきます。








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