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「雲雀ぃ」
紫煙を吐きながら彼女は 僕が生まれた日はいつか ときいた。…空気が悪いな。口にハンカチをあてて窓を開けると外から雨の匂い。すうっと吸いこむとまた後ろから胸くそ悪い紫煙。
「ねぇ、いつ?」
「今日」
「うっそ!私何の準備もしてないんだけど」
驚いてソファーからずり落ちた彼女は んー だか あー だか悩ましい声をあげて、額に人差し指をあてる。書類を仕上げなければならない僕は学ランを背もたれにかけて、大量の紙に目を通す。途中、彼女の写真つきの書類があったので捨てておいた。最近大人しくしてるみたいだし、粛正は必要ないだろう。
「雲雀!!!」
バサアッと書類が舞う。やっぱりかみ殺そうか。トンファーに手をかけると彼女は焦って床に散らばった書類を片づけ始める。
「ケ、ケーキとか何が好き?」
「手作りと毒入りでなければ何でもいい」
「欲しい物とか…」
「新しいトンファーの仕込み道具」
「他には」
「ないね」
「困るぅううう!!そーゆーのが一番困るぅうううう!!!」
うがぁあと奇声をあげて床を転げ回る女にため息。せめて書類の上でジタバタしないで欲しかった。
「何?邪魔すんなら出ていきなよ」
「雲雀誕生日だよね?何そのテンションの低さ」
「誕生日だから何だって言うんだよ」
彼女はパチクリと目を瞬かせて、僕を見た。君の顔はアホ面極まりないね。
「誕生日だよ?」
「そうらしいね」
「誕生日っていえばプレゼント貰ったり、おめでとうって祝ってもらったり、好きなケーキをホール食いできるんだよ?」
そんなことは知っている。一般家庭では家族の誕生日を彼女が言ったように盛大に祝うなんてことくらい知っている。でも僕は一般家庭に生まれなかった。他の子の当たり前は僕にとっての当たり前じゃない。
「…雲雀…」
彼女が僕の手をとる。生ぬるい暖かさがなぜか気持ちよかった。
「友達いなかったんだね…!今こそ友達作戦を実行しよう雲雀!友達百人作って富士山の上でおにぎりを食べよう!それが最終目標だ!!」
「…欲しい物あったよ」
「えっ何なに!?」
「ウザくない彼女」
110505 chikura
バリさんおめざます。