ガールミーツホスト | ナノ
「ザ、ンザスさん…?」
「こいつは俺のとこで引き取る」
沢田は俺を静かに睨んだ。
「…文句のひとつでも言いたそうな顔だな」
「ひとつだけじゃないけどね」
呆けて床に座りこむまりあをソファーに座るようにうながして、奴は口を開いた。
「お前のとこは危険すぎるよ」
「どこも似たようなもんだろうが」
「いーや!違うねっ」
「てめえんとこに置いてみろ。殺傷事件に巻き込まれる」
「ヤクザよりはましだと思うけど」
まりあ。お前の入ろうとしている世界は思った以上に大変なんだ。ここは危ないし、汚ぇ。こんなとこにいたら嫌でも染まっちまう、腐っちまう。お前はここにいちゃいけない。
「嫉妬やら妬みやらでストーカーに困ってるってこぼしてたじゃねえか」
「ザンザスこそ統括がどうとかさぁ!」
このくだらねえ言い争いにのってくるところを見ると沢田も俺と同じように思っているのだろう。これはまりあが自分から帰ると言わせる為の小芝居だ。
「あ、の」
黙ってやりとりを見ていたまりあが突然立ち上がり、今にも掴みかからんとする俺らの間に割ってきた。俺らをみすえる目には一遍の濁りもない。
「大丈夫です。怖いけど…大丈夫です」
何が大丈夫なんだ。俺らは不安だらけだ。しかしな「大丈夫」か…。ハッ、仕方ねぇな。雰囲気が和やかになった瞬間、まりあがぐらりと傾いた。
「「まりあ!!」」
慌てて受け止める。ん?顔が赤いな…
「だ、大丈夫れす…。ちょっと頭がおも…」
「そういえば、ザンザスさんお酒飲ませたでしょ」
「ザンザス…」
「弱いな」
赤い顔で大丈夫だとうわごとのように繰り返す女にさっきの気迫はどこにも見当たらない。面白え女だ。