「俺、沢田綱吉。名前なんて言うの?」
「中村まりあです。あの、沢田さん…」
「ん?」
「下ろしてください…っ」
「やだ」
あの後二人はいきなり笑い出して、私を担ぎ上げた。いわゆるお姫様だっこというやつを人生初でされている。結婚式でされることに憧れていたけど、思った以上に恥ずかしい。じろじろ見られるし、みみ密着度が高い…!鎖骨…喉仏…、あ…肌きれい…。
「まりあちゃん、あの怖いおじさんがザンザスね」
「はっ」
「俺がおじさんならてめえもだろ」
「俺まだ20代だし」
「俺もまだ20代だ」
「三十路前じゃん」
「死ね」
「じ、銃…っ!」
ザンザスさんの手に黒光りするそれは銃。本物だよね!?ヤクザだ、やーさんだ。
「……冗談だ」
「は、はい」
ザンザスさんは少し困ったように私の頭をぽんと優しく叩いた。…そんなに…悪い人じゃないのかもしれない。