ガールミーツホスト | ナノ
ここに住まわせてもらうことになって早6日。やっと仕事に慣れてきました。もともと積まれてた洗濯物さえ片付けてしまえば毎日出る洗濯物の量なんてたかがしれてるし、みんな毎日帰ってくるわけじゃないから掃除もそんなに必要ない。
「……一気にヒマ…」
「ねえ」
「はい?」
頭上から降ってきた声に顔を上げる。まだみんな寝てる時間、じゃ、
「っ!」
「……」
誰この人すっごく綺麗…いやかっこいい?ううんそんな簡単な言葉じゃカテコライズできない。切れ長の瞳が特徴的な整ったやや中性的な顔、しなやかな体、洗練された雰囲気。もしかしてこの人もホスト?
「仕事終わった?」
「は、いっ」
「…ちょっと付いて来て」
「………」
「………」
連れて来られたのは純和風な部屋。正座で男の前に対峙するも男はお茶を飲むだけで、沈黙が苦しい。ていうかこの部屋だけ何か重力が違う…っ
「(とりあえず何か話さなくちゃ)私、中村「自己紹介はいい」
「話には聞いてる」
「は、はあ…」
「………」
「………」
またこの沈黙…!
「出て行ってくれる」
「………へ?」
「君が沢田の何だろうと興味はないけど、ここをうろつかれるのは迷惑だ」
「………」
「そもそも君は学生でしょ」
「………」
「警察沙汰になるのは面倒だ」
「………ふっ」
「泣き落としは効かないよ」
「……ふっ、ははっ」
「(笑って、る?)」
堪えきれなくて畳をばしばしと叩く。あー可笑しい
「警察沙汰にはなりませんよ」
「……親なら、「あの人は私を探したりしない」
「…………」
「私をここに置いてくれると言ったのは沢田さんです」
「………置く?」
「私に仕事もくれました」
「仕事?」
「そうです!私はみなさんの洗濯とここの掃除を任されてるんです!」
「………君は沢田の何?」
「何って……」
「恋人じゃないの?」
男の声に血がさあっと引いた。まさか私が?!沢田さんの?!
「ないないないないないです有り得ないです!!」
「(そんな力いっぱい否定しなくても…)」
「あえて言うなら沢田さんは恩人で雇い主です!これで満足ですか!」
「(ムッ)僕には何もメリットないけど」
「洗濯物やってあげてるじゃないですか!」
「クリーニングに出してるから君の世話になってない」
「なっお金が勿体無いです!私に持ってきてください!」
「嫌だ。下手な素人に任せたくない」
「〜っ!あなたにデメリットもないじゃないですか!」
「自分の縄張りに知らないやつがいるのが嫌」
「そもそも沢田さんが決めたことですよ?!」
「だから?沢田がオーナーだろうが僕はあんなやつの下で働いているという気はないよ。仕事じゃなければあんな」
男が目を見開いて私を見る。それもそのはずだ。だって私が男に湯のみを投げたから。湯のみは男に当たらず、少し遠くで割れずに落ちた。
「……失礼します」
これ以上、この男と同じ空間にいたくなかった。沢田さんは私の恩人。何も聞かず私を助けてくれた優しい人。こんなやつ、かっこいいなんて思った自分を殴ってやりたい。
正座で痺れていた足もあまりの怒りに収まってる。すくっと立ち、その場を去ろうと踵を返す。
「沢田は君が思ってるような男じゃない」
後ろから聞こえた声に振り返る。
「あんたよりは絶対まし!!!」