その後私は食堂のおばちゃんなる人物と会った。

やはりおばちゃん(名前は秘密だそうだ。女性の秘密は守らねばな)はぎこちなく私に挨拶した。
こんな変な風に学園をしてしまったとは…。
天女め、地獄にいたら私直々に拷問してやろう。


手伝えるだけ手伝った後、すっかり暗くなってしまった夜の庭に出た。
三日月が空に浮かんでいる。
平成の世じゃあ現世で綺麗な夜空を見られる所も減ったと前に誰かが嘆いていたな。
そいつに見せてやりたいものだ。

「ギンギーン!!」

…そんな綺麗な夜に不釣り合いな声が聞こえるとは…。
風流のわからん奴め。どれ、少し灸を据えてやろうではないか。
少し助走をつけ屋根に上り、声の出所に行ってみる。
声の主はすぐに見つかった。付近は一人だけだったからな。
私に背を向け鍛練をしている。
おや、この少年は…

「挨拶しても出て来てくれなかった一人ではないか」

そう。夕方天井裏から私を見ていた者達の一人だ。
少年は勢いよく振り返り、屋根の上にいる私を見つけた。
新卒をからかった時の反応と似ているな。鬼灯が中々驚いてくれないから私はちょくちょく新卒にちょっかいを出す。
その時もこんな風に驚く。
ただし目の前の少年の様に認識されると同時に警戒心を持たれる事はない。

声を掛けただけであろう、酷いではないか。
呆れてもはや怒る気も失せてしまったが一応言っておこう。

「こんな月の綺麗な夜に不似合いな声を出すのは感心せんな。
 ついでに言うが私はお前に名乗ったがお前は一言も返していない。失礼なものだ」

ぐ、と少年は何も言い返せないようだ。
反論しようと思えばこんな言葉、簡単に反論できるであろう。おや、それは鬼灯基準か。

渋々ながらも少年は潮江と名乗った。
何をしても失礼な奴だな。
そう思ったのと暇潰しに私は潮江にある提案をした。


「明日の暇な時、決闘紛いの事をしようではないか。
 お前が勝ったらその無礼な行動について何も言わんが、私が勝ったら直してもらおう」







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