大川殿に提供された部屋を確認した後、私は挨拶まわり?に行くことにした。
高天原じゃあ引っ越して来る者なんて中々いないから挨拶まわりなんて知識だけだ。

とりあえず手始めに先程から鬱陶しいくらいの視線を向ける天井裏の奴らにしてやるとしよう。

「そこの天井裏の数名」

小さくカタ、と音がした。人間では聞こえない程度だが音を立てたことには変わらない。
聞いていた通りまだまだ未熟者だな。

「今日からここで邪魔になる雨箕だ。
 あー…よろしく頼む?」
「……」

返事がない。気配はあるからただの屍ではない。
私だからスルーしてあげるものの、鬼灯だったら金棒ものだ。
ここに来たのが私であることに感謝してもらいたいものだな。

出て来てくれる気配もないし仕方あるまいから探索がてら次行くか。
おや、別れの挨拶をしなくては。

「そこの3名。お前達の気配は覚えたから次会う時を楽しみにしておるぞ」

廊下に出てみた。
大川殿と話していた時もう既に夕暮れだったな。ずいぶんと暗くなっていた。

そういや夕飯っていつなんだ?大川殿との契約に食堂の手伝いというのがあった気がするが…。
私は食物摂取が必要ないからすっかり忘れていたよ。

さっきの3人とは違う気配が近くにするからその人に訊こう。



この上辺りか。気配の出所。

「すまないが、夕飯というのはいつなんだ?」

天井に向かって訊いてみた。
何も返されないからこいつもか、と思って先に行こうとしたら下りてきた。
最初からそうしてくれ。

下りてきた少年は探るような視線を向けて何も言わずにじいっとしてる。
何事かと考え、自己紹介をしていないことに気付いた。

「私は雨箕という。色々あってここに迷い込んでしまってな。大川殿に話は通してある」

目の前の少年は私の大川殿の呼び方に驚いた顔をした。
ここの人間は先生呼びをしているからか?それとも年上は敬え的なものか?
後者の場合、私は大川殿よりも数千倍以上年上なんだが…。

目の前の少年は食満と名乗った。中々に珍しい苗字だな。
食事の時間はもうすぐだという。

今から行ってやれることなどたかが知れているが、行くだけ行ってみようではないか。







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