大川殿に「入れ」と言われ、入ってきた少年(いや、もしかしたら青年かもしれない)は私の姿を見止めると気をピンと張った。
少年か青年で迷ったのは、あの世じゃ歳いっても人間みたいにシワシワにならずに若いままだから見た目で人間の歳がわからないからだ。

というか話すのに私がいてもいいのであろうか。という視線を送ると「大した話ではないから構わん」と大川殿が口で答えた。
内容は頼まれていたお菓子が買えなかったから違うものを買ってきたという話だった。
本当に大したものではないな。

少年だか青年だかは話が済んだのか出て行った。
気配も遠くに消えた頃、大川殿が口を開いた。

「雨箕殿は行く宛はあるか」
「ないね」
「なら帰れるまでここに居るか?」
「正直助かる。

 ・・・・で、目的は?」

わかっておったか、と大川殿はふぉっふぉと笑い、こちらを見た。

「さっきのあやつの行動でわかったじゃろうが、天女の影響でここの人間は外部の人間――特に女性に過敏になっておる。
 じゃがお前さんの様にただの迷い人が来た時もあの様子じゃ敵わぬ」
「要は外から来た者に対する過度な不信感を払拭しろ・・・という事だな?」
「そうじゃ」

確かに大川殿の友人が来たときにあんな風に警戒されては色々とまぁ・・・あれだろう。
それを止めるかわりに住む所の提供か。

ニートのご隠居のいい暇潰しになってくれそうだ。

「いいだろう。乗った」

うむ、と大川殿は頷き、

「一部の教師を除き、お前さんの事は『迷い人』だと伝えておこう」

と言った。

「一部の教師というのは先程から天井裏にいる者達のことか?」

上の気配がザワリ、と動いた。大川殿はまたふぉっふぉと笑った。

「やはりわかっておったか。一応プロなんじゃがのう」
「普通は気付かんだろうな。
 

 私はあれだ。年の功だ、年の功」






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