その後私は大川殿(名前を聞き、こう呼ぶことにした)と共にお喋りという名目の情報交換をした。

しかしどういう流れでそうなったかは覚えていないが、大川殿のプロマイドの話になった。
私がそこに知り合いの媼(もちろん奪衣婆の事である)もヌード写真集を出版したがっているという話をすると話が弾んでしまい、私もいつの間にか敬語が取れてしまった。
というか情報交換という名目のお喋りになっている気がする。
それは大川殿も同じらしく、ヘムヘムという名の二足歩行の犬(鬼灯がいたら不喜処にスカウトしていただろう)が来た時に

「おおヘムヘム。こちらは雨箕殿といってな。今雑だ…じょ、情報交換をしておったところじゃ!」

と言っていた。
だが、その雑談だかお喋りだかで大川殿は私の事を怪しい者でないと判断したらしく、『ここを知っているか』という不可思議な質問をした理由を話し始めた。

どうやらここに『天女』と呼ばれる存在が現れ、荒らしていった事が三回あったらしい。
そしてその『天女』とやらは学園及び生徒の事を知っていたと。
二回目以降は『天女』を一ヶ月の猶予をもって『天に帰して』いるとも言った。
私からしたら天女といえばアマテラスの侍女の仔とか…てか高天原の神以外の女の子というイメージだが。
残念ながら私は天国の住人だが、隠居暮らししているのとほとんど地獄に行っているので曖昧にしか知らない。

それにしてもその『天女』ってただの人間の妖術師じゃないのか?
白澤の馬鹿じゃあるまいし、天国の者が衆合地獄の亡者と同じような事をするとは考えにくい。
という旨を伝えると「そうか…」と考え込んでしまった。

ちなみに私も話せる範囲を話した。こちらが教えてもらうばかりじゃ不平等だからな。
私が何者かを上手く隠しながらいわゆる『あの世』についてざっくりと話した。
大川殿は「信じ難い話じゃ」と言っていながらも、やっぱり時代的なものもあるのかな。
あの目は半分以上信じていた。

そしてその後また雑談に戻った。

「ほぅ。大川殿の思いつきで体育祭を」
「ああ、大いに盛り上がったぞ。賞品はわしのプロマイドでなぁ」
「私の方は今年から『精神的運動会』となってな。これまたスリリングで……」
「なるほどなるほど。それもまた面白そうな………」
「いや、そちらの発想も中々………」
「…………………………」
「………………」
「………」
 …………………
 ………
 …




「学園長先生。おられますか」
「「ハッ!!」」

気がつくと外は綺麗な夕焼けに染まっていた。






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