そう、はじまりは実にくだらないものだった。

ちょいと用があって白澤の所に訪ねたら鬼灯がいた。
ついてないな、と思ったよ。だってこの2人が同じ場所にいるんだから喧嘩は必然。
仕方がないから少し離れて喧嘩が終わるのを待った。
暫らくしたらいつものとおり白澤が鬼灯にぶっ飛ばされて終わり。
白澤はボロボロだったがそれを無視して用を済ませた。
で、白澤への用は済んで帰ろうとしたんだがアイツ、

「鬼灯の事だからまた落とし穴掘ってあるかも知れないからさぁ、雨箕さん一応この辺一周してきてくれない?」
「だが断る」

ここの対応は間違っていなかった。
あ、ちなみに私は女性で唯一白澤に『さん』で呼ばれていると思う。
まぁこの歳に向かって『ちゃん』はないもんなぁ。
…話はずれたが、ここまでは良かったのだ。
白澤が、あんな事を言わなければ…。



「最近珍しい神酒を貰ったんだけどさ、」
「よし乗った」


そういう訳で白澤の為、というか酒の為にやってやったよ。
それで半分くらいを過ぎた頃であったか、急にアイツが話しかけて来た。

「さっきの話だけどさぁ」
「うん」

次の一歩を踏み出した時、ピシリと地面に亀裂が入った。


「あれ嘘だから☆」


私の心の如く地面がガラガラと崩れ落ちる。
落ちながらくるりと振り返り、白澤に向かって最後の言葉を投げてやったよ。

「白澤貴様次遭うときまでに手足と首を洗っておくがいい!!
 鬼灯と共に貴様をぶっ潰してやる!!」








…以上がこのよくわからん場所に来た経緯だ。



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「見えない臓器の名前は」
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