「大川殿。今日は休みをもらいたいのだが」


私からの頼み事なんて中々無いからか、大川殿は目をぱちくりさせた。

「何故じゃ?」
「あーとりあえず休みをもらえるかもらえないかだけ答えてくれ」
「まぁ…構わんが…」

理由を聞きたいのだろうが、生憎上に気配がある。

「…上の奴が居なくなったら言おう」

私がそう言うと、大川殿は天井に目をやった。

しばらくして気配は遠くに消え、ふぅと一回ため息を吐いた。

「…どうしても今日は、帰りたいのだ」
「しかしどうやって?」
「そこなんだよなぁ…いくつか帰り方の目星はつけたが」
「ほぅ」

お茶をズズっと啜った後、一拍おいて口を開いた。

「この辺りに『いきどまり』の看板、もしくは立ち入り禁止の場所はあるか」
「…この辺りには…無かったと思うが…」
「そうか…」

平仮名の『いきどまり』は『行き止まり』ではなく、『生き止まり』もしくは『息止まり』だ。
失踪者や死亡者が多発する辺りにそういう看板はある。
つまりは地獄に通じる可能性があったのだが…。
無いならば仕方ない。

この辺りのどこかで代わりに…

「しかし、何故今日なんじゃ?」
「ああ…」





「私の旦那の命日なんだよ」









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