「暇だ…」

私はそうポツリと呟いた。

「暇すぎる…」

今日は休日だ。
休日はいつも大川殿と雑談をして過ごすのだが、生憎用事があって今日はいないらしい。
よって先程の言葉に繋がる。

鬼灯、仕事中毒者とか言って済まぬ。
仕事が無いと暇だ。

「あ、落書きしよう」

思い立ったら即行動。
木の棒を持ち、地にガリガリと書いてゆく。




「あ、天女様」

落書きをしていると五年生の服装の者が二人、一年生の服装の者が三人やってきた。
確か…久々知、不破、猪名寺、摂津、福富だ。
そういえば挨拶まわり編の後、ちゃんと一人一人に会いに行った。

「天女ではない雨箕だ」
「何書いているんですか雨箕さん?」
「家系図だ」
「は…え?」

質問した久々知は目をぱちくりしている。
忍者に成りたいなら表情に出しては駄目であろう。

「え〜!これ全部覚えているんですか!?」
「ああ。これでもまだ書き途中だぞ?」

猪名寺少年達一年生は純粋に驚いている。
ちなみに今上から見ると3m×15m位だ。
まぁ…自分でも長いと思うから相当だろう。

「雨箕さんは後どれくらいで出てくるんですか?」
「私はとっくに書いてしまったよ」
「えぇ?どこですか?」
「秘密だ、秘密」

そう言うと「じゃあ探してみます!」と元気よく最初の方へ行ってしまった。

「あの、天「雨箕だ」…雨箕さん、これって神々の系図…ですよね?」

不破、久々知に注意したこと位直せ。
天女のワケない。
そして私は家系図を書いているとちゃんと言ったハズだぞ。

「それがどうした?」
「え…」
「ご自身の家系図ではないですよね?」
「いや、私の家系だが」

あ、そういや大川殿には色々言ったがコイツらにはまだ言っておらんな。

ま、面倒だしいいか。
大川殿にも私は『誰』とは言ってないし。

「あの…國常立尊の上の神様って…」
「ん?アメノトコタチの事か?あー…」

この時代は室町か戦国か。

となると主流は正史の日本書紀。
クニノトコタチが最初の神とされていたな。
で、別天神はちょろっと出てきているかいないか。
江戸時代に本居が『古事記伝』を著すまで古事記は軽視されていた。

だから別天神は知れてない…か。
寂しいものだな。

だが…

「まぁ知らなくても何ともない…かなぁ」

自分で言ってて少々寂しくなってきてしまった。
さっきの(四行上の)は言っただけで実感はなかった。
あー…こういう奴は一時期本当に多かったなぁ…。
別天神は皆泣いてた。
おかげで私も亡者から「お前誰?」とか言われる始末(後日じっくり拷問しました)。

「あの…教えて頂けないでしょうか?」

…は。

「別天神を…か?」
「ことあまつかみ?」
「その他日本書紀に載ってない…神々も?」
「出来れば…」

私の中で不破の株が一気に上がった。







〜解説的なもの〜
古事記は一つの話なのですが、日本書紀は色んな所から引用しまくっていて同じ事件の話でも『別の説では〜』とか書いてある。
なので日本書紀は神代の所の本文を繋げて読むと「え、これ矛盾してね?」ってことが結構あるらしい。
別天神は名前が出てても一ヶ所だけだったり。
古事記と日本書紀で神様の名前違ったり。

間違っていたら教えてください。

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