ギイィン…

鈍い音が響き、ワンテンポ遅れてザクッと地に何かが刺さる音がした。
静寂が辺りを包み、さっきまでざわついていた野次馬も居ないのかと思う位静かだ。

「終了、だな」

私がニヤリと笑ったが、目の前の潮江は固まったままだ。
さほど可笑しなことはしていないが、私の声の後に続く物音もなかった。
ずいぶん白けた反応だな。

木刀を返そうと、貸してくれた少年の方に歩いているとようやく潮江が口を開いた。

「あ、あり得ん」
「まったく…何がだ」
「木刀で…
 木刀で苦無が折れるなんて」

それを皮切りに再び周囲が騒ぎ始めた。
中には私が不正を働いたのではないかという声もあった。
それが無いよう木刀を借りたのであろうが。

「有り得る。違うと言うのであれば地に刺さっているそれは何だと言うのだ。
 少なくとも私には苦無の切っ先にしか見えん」

そう言うと批判の声は止んだが、相変わらず周りは沸いたままだ。
潮江も腑に落ちないという顔をしている。
思わずハァと溜め息が出た。

「殺気だ」

少し話してやろうと思い、そう切り出した。

「殺気とは何も周囲に放つだけのものではない。
 獲物の切っ先に込めればその殺傷能力は飛躍的に上がる」

再び静寂が辺りを包んだ。
勉強しようという心がけは中々いいな。

「殺気を込めれば
 木の棒といえど石を砕き、鉄をも貫く」

近くに生えている木に向かって木刀をぶん投げた。
勢いよく木刀は飛んで行き、木の幹を貫いた。

「最も、ここまでの殺気を獲物に込められるようになった時、」

幹から木刀を引き抜き、後ろのギャラリーを振り返った。


「お前達は人ではいられない」










back





「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -