また来世で、



※しねた









つい先程、医務室に運ばれた。

毛布を掛けてもらっているが、体は冷たくなっていく。


私はもう助からないだろう。

だって皆暗い顔をしているから。

伊作先輩が小さく「ごめんね」と呟いたのが聞こえた。

先輩は悪くない。悪いのはヘマをした私だ。


嗚呼、せめて忍たまの皆に謝りたかったな。

無表情でイタズラを仕掛ける私はさぞ怖かっただろうから。



廊下が騒がしくなってきた。

大方鉢屋とかその友達とかだろう。

鉢屋とは一緒によく馬鹿騒ぎしたものだ。

もう一度あいつと話したいけれど、この口はまだ動いてくれるだろうか。


「蓮っ!!」


乱暴に障子を開けて入って来たのは鉢屋だった。

ちょうど考えている時に来るなんて間が良すぎる。

この機会に言いたい事を言ってしまおう。力尽きる前に。

会えばふざけ合ってたから、こんな事を言うのは最初で最後だろう。


死にかけの馬鹿のうわ言だと思って本気で聞かないで。
「私、は…お前の、ことが、好きだった、よ…」


鉢屋の驚く顔がぼんやりと見える。

もう眠い。まぶたも重くなってきた。

言いたい事も言ってしまったし、もう、眠ってしまってもいいだろう。


「!待て!」


どこか遠い感覚で鉢屋が私の手を握るのがわかった。

最期の最期だから素直に待ってあげるよ。

重いまぶたを再びあげる。


「私も!…私も蓮が好きだ!だから…!」


逝かないでくれ。




鉢屋。私は来世までお前を恨むかもしれない。
私は死を受け入れようとしていたのに呪縛とも取れる言葉を言うなんて。


何かを言おうにも、もう声は出なかった。

でもあいつは読唇術でわかっただろう。

私の最期の言葉を。


『未練を残させた責任、来世で取ってくれ』






BGM 片翼の鳥/志方あきこ




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