平凡少女の時空旅行 | ナノ


▽ 平凡少女の旅行前01


大川学園高等部入学式――

ほぼ全員が中学部からの繰り上げの中、受験して他校から入ってくるのは極僅かである。
そんな人達は繰り上げ組から好奇の目に晒されていた。
『極僅か』の内の一人、弥栄みらいも例外ではなかった。
視線だけで隔離されている感覚を肌で感じながら入学式は行われた。



平凡少女の時空旅行



入学式が終わり教室に向かう中。
やっぱりどこの学校でも校長先生のありがたい長いお話はあるものだと思いながらみらいは歩いていた。
周りは仲良さげに「尻が痛かった」やら「眠ってしまった」やら話している。
中学校・小学校から一緒なんだなぁとしみじみ思い、隣に誰もいない自分に溜息をついた。
こんなことなら変な意地張らずに皆と同じ学校に入ればよかった、と入学早々後悔し、眩しすぎる周りを見ないよう下を向いて歩いた。
ちなみに、変な意地の内容は「べ、別にコミュ障じゃないもん!」である。
もちろん嘘である。
本当だったら今こんな事になってない。

下を向いて歩いていたのがいけなかったのだろうか、
ドシンと後ろから歩いてきた人とぶつかった。

「あ…悪ぃ」

相手は謝ったが、そもそも下を向いていた自分が悪いのだ。
少し申し訳なくなり、小さく「こちらこそ」と言ってペコリと頭を下げた。
それで立ち去ると思っていたのに、去るどころか視線を感じる。
どうしたのだろうと視線を上げると、相手の男子は驚いた顔をして固まっていた。

「お前・・・弥栄みらいか・・・?」
「え・・・?」

もしかして知り合いだったのだろうか。
今度はみらいが固まってしまった。

「(どうしよう・・・見覚えがない・・・)」

みらいの反応を見て、男子が焦ったように言った。

「覚えているだろう?」

そんな事を言われても思い当たる節はない。
首を傾げるだけのみらいに男子は落胆したように溜息をついた。

「・・・きっとあいつらを見れば思い出す。だから後で1-2に来い」

それだけ言うと男子は立ち去ってしまった。
一人ポツンと残されたみらいはポツリと呟いた。


「・・・新手のナンパ?」






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