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「さて、と……」
先程神と自称した者の声が誰もいない空間に響く。
「我らはこうして彼女の物語を見てきたが……お前達が知り得ぬ舞台の外の動きが活発だった故に納得できぬ部分が多々あるだろう。
しかし現実も同じようなものだ。自分のいない所で起こったことなど知り得ぬ……ああ、『今』はメディアが発達しているから全て知り得ぬ訳ではないな。
まぁいい。
そして、知らぬ方が良いこともまた多し。
ほら、私が言っただろう?『全てが思い出になった時、赦し合えると信じて』と。
すなわち、彼らは謝った後、彼女に何かしらをした、またはしようとしたという事だ。
最悪の解釈をしてしまえば謝った事自体が演技だった、ともできる。
それを彼らは彼女に言うのかどうか……それは次の舞台の上でしかわからぬ。
そして彼女自身についても一つ、大きな問題がある。
私が転生を告げた時、彼女は抵抗をしなかった。
つまりそれは次の舞台に希望を抱いているのか或いは彼らの思いを知ったからか或いは………
……いや、いくら邪推したって現実は変わらぬな。
起こった事はどうあっても変えられぬ。
ああ、舞台の外の話に戻そうか。
実は彼女の遺書は彼らが正式に発見する前に一部が切り取られてしまったのだ。
前半の、彼女の素直な……言葉が書いてある部分だ。
最も、本当に素直な言葉を書いたのか、そんなことはわからぬがな。
そう、この物語は彼女の一人称視点。脚色がどこに入っていても可笑しくはない。
会話の部分だって、相手が本当にそう思って言っているのか……。
心を覗けぬ以上、我らは疑いを持つ。そして、真実を求めるのだ。
彼らの思いを。彼女の思いを。
このような事が起きた所以を。
本当に彼女はそう思っていたのかと。
だが…………そう思う一方、私は思うのだ。
全てを疑い、真実を求める事よりも、彼らが幸せな夢を見られるような優しい解答を出してやる方が良いのではないか、とね。
おや、次の舞台の幕が上がるようだ。
願わくは彼女が本当の願いを果たさんことを」
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