▼ ある少女の遺書
恐らくこれを見つけている頃には私はもうこの世にいないでしょう。
この先に書いたのは私の嘘偽りのない本心です。
刃物のように心を突き刺すものもあるかもしれません。
ご了承ください。
あなた達は私と仲良くなりたいと言ってくれました。
ですが、私としてはどうせならずっと嫌ってくれた方が良かったです。
好意を向けられた所で、私はそれを疑う事しかできません。
私があちらで死んだちょっと前……友人に裏切られた時から、人の正の心を疑う事しかできなくなってしまったようです。
あなた達は私に悪意を向けた事を謝り、歩み寄ろうとしてくれました。
それに対して私は適当な言葉で表面を繕い、誰よりも相手を信じていなかったのです。
あなた達は悪くないのです。
私が勝手に一人で心苦しくなり、一人で自害を選んだのですから。
だから、どうかいつも通りの生活に戻ってください。
以前、陶器と接着剤の話をした人がいましたね。
バラバラになった欠片一つ一つがあなた達で私が接着剤と。
けれどもう、あなた達は自分自身でくっつく事ができます。
そこに新しい接着剤を足した所で不恰好なだけです。
天女達が来る前、どんな雰囲気だったかは肌で感じた事はありませんが、
今のここは活気が満ちてきているのは断言できるでしょう。
だから、私はもう居なくても大丈夫です。ここが潮時でもあったのです。
これを読んであなた達は身勝手だと言うのでしょうか?
なら、最後にもう一つ我が儘があります。
もし私の死体――恐らく見るも無惨な姿になっているでしょうが、それを見つけた場合、
火葬でも風葬でも構いませんが、骨は誰の目も触れないような、
ひっそりとした場所に埋めてください。
供養等はしないでください。
死してなお心苦しくなりますから。
学園の皆様方、今まで本当にお世話になりました。
そしてその結果がこれでごめんなさい。
ありがとうございました。
さようなら
多上みさき
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