無関心でありたいのにいられない | ナノ


▼ 星の綺麗な日

「多上さん、今日上級生で酒盛りするんだけど一緒にどう?」
「いえ…結構です」

医務室から退院し数日経つが、敬語は抜けなかった。
それほどまでに少年の死がショックだったのだろうと冷静に自分を分析した。

また、敬語になってしまっただけでなく、元々積極性が無いのが更に悪化したようだ。
現に今不破の誘いを目も合わせずに断った。

「うーん。皆多上さんがそう言うと思ってね、強制的に参加させるって」
「え、」
「誰かが迎えに来ると思うからあとでね〜」

何ということだ。
だがよくよく考えてみると、酒飲んで口が軽くなった時に私を運んだのが誰か聞き出せるんじゃないか。
じゃあ参加する方がいいか。
結局強制らしいけど。



…誰だ参加する方がいいって思った奴。私だ。
連行されて早々帰りたくなった。

仕方ないだろう。
私アルコールの臭い駄目だから。
あともう出来上がってる奴が結構いるから。
目を覆いたくなるレベルだ。

「来たか、多上。飲め」
「いえ、酒は飲まないつもりですので」

だが立花はそんな私の返事を無視し、徳利を渡してきた。
いや、だから飲まないんだって。
年齢的にも平成じゃアウトだし、何より私は成人しても飲む気がない。

視線で立花に訴えたが、やはり無視された。

「…飲まなくとも注ぐくらいはしてくれるだろう?」

あ、そっちですか。
こういうのは美人さんがやるものだが………。

……いや注ぐだけでもしたくない。
この部屋酒臭すぎる。
それにたまに何かが宙を舞っているんだけど。
何でトイペが空飛んでるの。

一回注いで外出るか。



縁側に出てみると先客がいた。

「あ、多上さん」

綾部だ。
縁側に腰掛け、足をブラブラさせている。

「あなたは参加しないのですか」
「あなたこそ」
「酒はどうも苦手で…それに…」

少し賑やかすぎて。
その言葉はぐっと飲み込んだ。
綾部はしばらく私を見ていたが、空に視線を移し、つられるように私も空を見た。

私の心と比べ物にならない位の綺麗な夜空が広がっていた。
既望…というのだったか、満月から数日経った月が空に浮かび、一つ一つ見える星も輝いていた。

ため息の出そうな程に素晴らしかった。

「多上さん、早く戻ってください。
 仲良くなろうとした途端にこうなってしまったから…」
「…すみません」

でも何かもう一つ
少年の死以外のつっかかりがある気がするんだ。







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