無関心でありたいのにいられない | ナノ


▼ 後悔とぬくもりと

その後どうやって来たのか全然覚えていないが、一面の花畑で傘もささずにうつむいて座っていた。
雨が降っていなければさぞ綺麗な所だっただろう。

霞んだ花畑の中で私は涙も流さず、ただ座っていた。
悲しくないわけではないが、瞳から涙は出なかった。
身内で何人も死んでいるからついに涙が出なくなったか、と軽く惨めな気持ちにもなった。

今は一体いつなのだろう。
一体どうしてこうなったのだろう。
…どうして一度死んだくせにここまで生きてきたのだろう。
今まで『なんとなく』生きてきたけれど、それが良いことだったのかよくわからない。



…この花畑で死ぬのも一興かな。

「おい!」

後ろから誰かの呼ぶ声がした。
だが、今外部で起こっている事などどうでもよかった。

少年が死んだ直接的な原因が違うとしても、間接的な原因は私だろう。
更にもし少年が私を待ち続けて死んだとしたら……。

「こんな雨の中座り込んでいたら風邪をひく」

言葉は認識出来ても声紋が私の中で認識されない。
顔も見ていないからわからない。
…まぁ誰でもいいや。

「ほら、帰るから立て」

帰る?どこに?
私の帰る場所は両親と共に失った。
それなのに今更どこに帰ると?

不意に肩に手を置かれ、その映像が脳内で処理される前に誰かに背負われた。

これはどういうこと

「…たまには泣いたっていいと思う」

脳内で未だに認識されない声の主がそう言った。
そんなこと言われたって泣けるわけがない。

…と思ったが視界がぼやけてきた。

相当精神的にきていたのか、久しぶりに触れた人肌の温かさか、
理由はどちらかわからないが涙が頬をつたった。
人前で泣くなんていつぶりだろう。

声もなくさめざめと泣く私を背負いながらそいつは黙って歩く。

「ごめんなさい…ありがとう…」

それは少年への言葉か、はたまた私をおぶっているそいつへの言葉か。








prev / next

[ back to top ]



BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -