無関心でありたいのにいられない | ナノ


▼ 雨の日

謝られ事件から数日経ち、ようやく来た休みは生憎の雨の日だった。
孤児少年の所に行こうと思っていたんだけど。
傘って誰かに借りられないのかな。もしくは用具かどっかに貸し出し用みたいなのがあったりとか。

そう思って食満に訊いてみたら今はないそうだ。
じゃあ誰か出掛けない人に借りるか、と思い歩き出して…ナメクジを発見した。
これは…山村少年だよな、ほぼ百%。
雨降っているから出てきたのか。あ、それはカタツムリか。



「はにゃ〜ん。ナメさんお帰り〜」
「…いきなりで申し訳ないのですが傘をお借りできませんか」

山村少年にナメクジを届けて早速そう尋ねた。
この天気だ。ナメクジ脱走阻止のために山村少年は出掛けないだろうと見込んでだ。

「あ、用具委員会のがありますよ〜。取ってくるのでナメさん見ててくださ〜い」
「え、ありがとうございます」

「あと、敬語はとってくださ〜い」と走りながら言う山村少年を見送る。

…後で嘘言った食満はシメるとしよう。
勘違いであれ故意であれ容赦なしに殴ろう。




やはり雨だからか町はいつもより静かだった。
孤児少年がいつもいる場所に行ってみたが誰もいなかった。
雨がもろに当たる所だからどこかで雨宿りでもしているのだろうか。

「あれ、お嬢ちゃん」

振り返ると町に来た時何度か見かけたことのある…おじさんとお兄さんの間くらいの人がいた。
話しかけられるのは初めてだ。

「あの、ここにいた少年は…」
「ああ、…やっぱりあの坊主に会いに来たんだね」

暗い顔で発せられたその言葉で、スーっと血の気が引くのを感じた。
これからこの人が言うことを何となくわかってしまったから。

…ここから先は聞きたくない。

「あの坊主ね、四・五日前に死んだよ」




孤児少年の遺体は山林の中に捨てられたらしい。
供養してくれる人もおらず、疫病が発生するといけないから町から離れた所に。
少年は衰弱死だったそうだ。

私があの日、『気が進まない』なんて理由で行かなかったからこんな事になったのだろうか。
あの日、私が行っていれば少年はもう少し長く生きられたのだろうか。

明確な原因はわからない。
けど、あの日会いに行っていれば少年の体調の変化に気付けたりしただろう。
私が、自分の気分で選択を誤らなければ。

「……ごめんなさい」








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