無関心でありたいのにいられない | ナノ


▼ 崖の上の少女

孤児少年に別れを告げ、私は学園への道を戻った。

私はずっと、死を選んだ理由は友人に裏切られたからだと思っていた。
でもよく思い出してみると幾度も突発的に『死にたい』と思っていた。
友人に裏切られたのはただのきっかけで、自分の深層心理にもっと別の理由があるのかもしれない。
一体なぜ私は死のうと思ったのだろう…?

考えながら歩いていると不意に前方を誰かが横切っていくのが見えた。
横は森しかないのに誰だろうと目で追うと、無自覚決断力あり方向音痴・神崎少年だった。
神崎少年のことだ。迷っただけで森に用がある訳ではないだろう。
学園に戻るんだったら連れて帰ってやろう。

「あの、」
「なってっててて天女様!?どうしてここに!?」

あぁ、うん。この反応は仕方ない。
でも神崎少年をこのままにして富松少年が来るのを待つのもなぁ…。

「学園に戻るんだったら一緒に行きませんか」
「い、いえいえ!いいです!」

そう言って走って行ってしまった。
え、どうしようこれは。追うべき?追うべき……………ですよね!はい!
変な所行って更に迷子になってもあれだもんね!
ということで私も走り出す。

「ちょっ!追って来ないで下さいよー!」

だったら人の話を聞け、バカ!!
でも幸か不幸かこの辺は見覚えがある。学園は近い。

神崎少年にもう一度声を掛けてみる、か。
そう思って神崎少年を見ると………

神崎少年の行く先は、私が落ちかけたパッと見判らない崖じゃないか。
まずい、と思ってスピードを上げる。
自分の足が割合速くて助かった。

ずいぶん近付いてもうすぐ手が届く、という所でズルッと音がして「うわあぁぁあ!!」と神崎少年が悲鳴をあげながら下に消えた。
頭が真っ白になってお使いの品も放り出し、飛び込むようにして神崎少年の後を追った。
もう私のせいで誰かを死なせてなるものか。
落ち行く神崎少年の甲側の手首をガシッと片手で掴み、もう片方の手で崖のふちを掴む。
正に危機一髪。かなりヒヤヒヤした。
崖からプラーンとぶら下がった状態だが、腕力や敏捷性はあるのだ。
…ただし持久力がない。
早く、終わらせなくては。

「おい!!どうせ私の監視か何かで上級生いるんだろ!?
 少年、少し揺らすぞ」

そう言って少年のいる方の腕を振って勢いをつけ、

「こいつを頼んだ!!」

崖の上にぶん投げた。
少々荒々しいやり方だが、少年が崖の上に届いたのが見えたからいいとする。
一方私の方はというと崖を掴んでいる手を離した。体力が切れたのとぶん投げた反動だ。
少年に誰かが近寄ったのが最後に見えた。

耳元で風を切る音が聞こえる。
ああ、答え直しもまだしていないのに…。
二回目の人生も、結局ロクなものではなかったな。

そう思い目を閉じた。






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