▼ ある少女の今の話
「お姉さんは…」
「?」
「お姉さんは、悲しくないの?」
話し終わった後、少年がそう訊いてきた。
普通訊くまでもなく悲しいと感じていると思うだろう。なのに何でそんなこと訊くんだ。
という様に首を傾げると、
「お姉さん、お姉さんがどう思ったかは言わずに、事実だけ言っているから…」
と答えた。人間図星だと何も言えなくなってしまうらしい。
「……」
心情を言わない理由は特にないはずなのに、どうしてか言葉に詰まってしまった。
自分でもよく解らないが、少年に言わなかった事の一つ…私が死んだ事に関係していると思う。
おかしいな、自分の感情や思考傾向は大体把握しているつもりだったんだが…。
何も言わずに少年の頭をわしゃわしゃと撫でると「わっ」と声が聞こえたが、しばらくそうしていた。
「ありがと、少年。次会う時はまた食べ物を持って来るよ」
「は?俺饅頭貰ったから礼を言うの俺の方だけど」
いや。そんなことはない。
私が『答えが出ている』と思って二度と振り返らないであろう事をもう一度考えさせてくれた。
今のこの環境下じゃあゆっくり考えるのは難しいかもしれないが、自分の性格を活かして落ち着いて考えようじゃないか。
私が…
私が自殺した
本当の理由を
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