セシルやカインに比べれば決して大きくはないとエッジは言うけれど、リディアにとってはこの手だって十分大きいと感じられる。 繋がれた手から伝わる体温に心地良さを感じながら、リディアはいつかローザに言われた言葉を思い出していた。 ――彼が、貴方の王子様かもしれないわよ。 そう言われたときは何を言ってるのかと思ってたけど、あながち間違ってはいないのかも知れない。 悲しい時だって、困ってる時だって、嬉しい時だって。 いつだって、傍にいてくれるのはエッジだから。 手を引かれたまま外に出ると、抜けるような青空が広がっていて、リディアは思い切り空気を吸い込んだ。 太陽の光に照らされて、気持ちのいい風が吹く。 少し前にいるエッジを見上げると、彼の紫銀の髪が光に当たってきらきらと輝いて見えた。 「んで、どこ行くんだ?」 そう言って振り返るエッジに、リディアは右の方向を指差して嬉しそうに声を弾ませる。 「えっとね、あっちに美味しいアイスが売ってるお店があるんだって!」 「お前は本当に、色気より食い気だよな」 「なによう、いいじゃない!」 そう言いながらも嬉しそうな笑顔を浮かべるエッジに、リディアは頬を膨らませて外方を向いた。 そうすれば、エッジが頭を撫でてくれることを知っているから。 思った通り、エッジは「わりー」と言いながら、空いた方の手でリディアの頭を優しく撫でる。 その感触にリディアはこっそりと笑いながら、またローザの言葉を思い出していた。 リディアはくるりと振り返ると、エッジを見上げてにっこりと笑う。 「しょうがないなあ、許してあげる!」 「はいはい、お姫様」 ちょっとだけ偉そうに言ったのはリディアの照れ隠しだったのだけれど、エッジはそれすら面白そうに笑うと、リディアの指差した方角に歩を進める。 広い背中を見つめながら、リディアはエッジの後ろをついて歩いた。 この人が私の王子様かどうかは分からないけれど、もしそうなら、いいかもしれない。 この手がずっと、傍にあるのなら。 繋がれた手をぎゅっと握り締めながら、リディアはそんな事を思ったのだった。 end. |